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関潤副COO退任で日産が犯したミスとは

人材の社外流出防止に必要な「新役員への心理面での配慮」と「契約上の縛り」

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

関氏に代表権を与えなかった取締役会

 日産には、日本型と欧米型の経営ヒエラルキーが混合している(拙稿「ルノーの子会社化が色濃くなった日産の新たな布陣」参照)。にもかかわらず、取締役会が強調した「トロイカ(3頭)体制」や「コンセンサス経営」の形式をとらず、代表権を関氏には与えず、3人を対等に話せる立場にはしなかったのは、なぜだろうか。

 おそらくその理由は、7月にスタートした「西川体制」の代表取締役が、西川CEOと山内COOの2人だったため、それぞれの後任である内田、グプタの両氏が代表権を継承したというぐらいの考えだったのだろう。

 ゴーン時代の反面教師として、ワンマン化を避けるために「トロイカ体制」を選択し、西川CEOのもとで始まったばかりのリカバリー・プランを「西川プラン」と呼ぶのに違和感を覚えるとまで言った木村会議長(社外取締役)も、こうした措置が与える影響まで考えていなかったと思われる。

 ポスト西川へのリサーチの一環として、関氏からヒアリングした際、彼が辞意表明後のインタビューで吐露した「社長になりたい」「今の年齢を考えれば最後のチャンス」という思いをどうして汲み取れなかったのか。あるいは、そんな希望を持つ彼に日産で活躍してもらうにはどうすればいいのかという発想に到らなかったのか。不思議でならない。

足りなかった心理面での配慮

拡大日産自動車グローバル本社=横浜市西区
 大事なのは、関氏にとって現在の日産は、彼が入社して頑張ってきた会社ではなく、ゴーン氏と改革成功のために働いてきた会社でもないという事実を、日産の取締役会が忘れていた点である。いまの日産は、ルノー支配の色彩が強まるなか、ゴーン前会長を強引な手法で追い出した後、新たなCEOまでもが短期間で辞任するという混乱の極みにある会社なのである。

 3人体制の各人が考えたのは、ルノーと交渉しつつ、従来からの社員を抱えるという難しい立場にあって、両者をうまくマネージするためには、自身の能力と努力だけでなく、他の2人との協調が必要だということだろう。しかも、取締役会は日産だけの業績にかかわるのか、ルノーとの協調にも重きを置くのかが明確ではない。

 こうした現在の日産の目的や課題は、一般的な日本の会社の課題とは大きく異なる。日産の生え抜きで生きてきた関氏にとっては、それまで培ってきた能力以外のものが求められるというリスクを意味する。

 だからこそ、彼を登用するにあたって取締役会が考えるべきは、

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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