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山口県で伊藤詩織さん判決を知る

[169]山口県阿武町、イージス・アショア配備候補地、『憲法くん』……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

こんな場所にイージス・アショアを配備するのか……

12月18日(水) 今日で66歳になった。朝早く山口市内のホテルをチェックアウトしたが、飲み過ぎて頭が痛い。何をやっているんだか。地元紙の山口新聞を見たら、何とこの新聞は第一面に「首相動静」を載せているのだった。

 今日は時間をかけて、阿武町のイージス・アショア配備場近くの農民に話を聞くことに。その農家の白菜畑はイージス・アショアの配備場から2百数十メートルの距離しかないという。初めてお会いする方で少し緊張した。農家民宿もやっておられるという。午前10時前にお宅を尋ねるとその人、白松博之さんがおられた。全く知らなかったのだが、以前、木から転落して車椅子を使用していらっしゃった。このあたりは土壌がとてもよいうえ、地下水が豊かで湧水も各所にある。何と地下水から水道をまかなっているとのことだった。

 イージス・アショアが配備された場合の環境の激変をこころから憂慮されていた。防衛省側の説明は、電磁波にせよ、水環境への影響にせよ、とにかく「影響はございません」の一点張りで結論ありきだと。とても怒っていた。

 畑を案内してもらった。山あいの土地をうまく利用して良質の白菜などの野菜をつくってきた。白松さんは山道を自分で車を運転して移動し、ひとりで車から降りて車椅子でがたがたの道を移動するのだった。相当な体力が必要だ。こんな場所にイージス・アショアを配備するのか。来てみなければわからないなあ、これは。

 このあたりは全く携帯電話もインターネットも通じない。本当に申しわけないのだったが、心のどこかに伊藤詩織さんの判決が気にかかっていた所があったのだが、ここはそういうものと隔絶した場所なのだった。だからかえって気が楽になった。白松さんはとても丁寧にご自分で説明してくださった。それに応えるべく僕らも丁寧に取材をしたつもりだ。このあたりは人工的な音がほとんどない。壮大な森林浴をしているような錯覚に陥る。

陸上自衛隊むつみ演習場=2019年7月12日、山口県萩市、朝日新聞社ヘリから201907拡大山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場=2019年7月、朝日新聞社ヘリから

 最後にむつみ演習場と畑との位置関係がわかる地点に移った。するとそこは電話やネットがなぜかつながっているのだった。もう時刻は11時半をとっくに過ぎていたが、10時36分に東京からメールで「詩織さん完全勝訴!」と履歴があった。さらにその後、東京の仲間が民放とNHKの昼のニュースでの報道ぶりを動画で送ってきてくれた。本当にありがたい。

 判決要旨を読んだ限り、本当に全面勝訴で、山口敬之氏の反訴は棄却されていた。画期的な内容だ。詩織さんの出版や集会参加活動の公益性も認めている。フランスの知人から電話がかかってきて、判決について感想を求められた。僕は

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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