梅原季哉(うめはら・としや) 朝日新聞論説委員(国際社説担当)
1964年生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部卒。93~94年、ジョージタウン大学外交学部MSFSフェロー。88年朝日新聞入社。長崎支局、西部社会部などを経て、ブリュッセル、ウィーン、ワシントン、ロンドンの特派員や、東京本社編集局長補佐を務めた。著書に『ポーランドに殉じた禅僧 梅田良忠』(平凡社)、『戦火のサラエボ100年史』(朝日選書)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「ベルトウェイの外」オハイオ州から見るアメリカと世界史とのかかわり(上)
世界秩序をもたらしたアメリカの過去・現在・未来/「ベルトウェイの外」オハイオ州から見るアメリカと世界史とのかかわり(下)
アメリカで政治を語る際、しばしば使われる「インサイド・ベルトウェイ(ベルトウェイの内側)」という表現があります。
ベルトウェイとは、首都ワシントンとその周辺都市圏を囲むように走っている州間高速道I-495号のことで、そこから比喩的な意味でホワイトハウス、連邦議会や各省庁に代表される「ワシントン政治」のことを指します。2016年の大統領選からこの方3年余り、「インサイド・ベルトウェイだけを見ていては、トランプ現象は理解できない」ということが、さんざん指摘されてきました。
つまり、アメリカ政治を形づくっているのはワシントンの論理ではなく、だだっ広いあの国のあちこちに住まう人々の息づかいのようなものだ、という理解です。再び大統領選の年を迎えたいまのアメリカを理解するうえでは、いわば必須の基礎知識といえます。
そしてそれは、良くも悪くも「アメリカによる平和」(パックスアメリカーナ)」として形づくられた、20世紀から今に至る世界の歴史を考える上でも、じつは大切な視点を与えてくれます。
この文章では、「ベルトウェイの外」の典型として、一般的に中西部といわれる地域の中から「オハイオ州」を採り上げ、そこからみえるアメリカと世界史のかかわり、その今に至る意味について記してみたいと思います。