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香港、東京、欧米……人びとはなぜデモをするのか

2020年代も路上政治の勢いは止まらない。民主主義にとってデモとはいったい?

五野井郁夫 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

 2020年が始まって間もないというのに、2019年に隆盛した路上の政治の勢いは止(や)みそうもない。どうやら2020年も路上の政治の季節は続きそうである。

 元日の香港では103万人の市民が路上に繰り出し、日本でも1月12日には東京をはじめ、列島各地で政府に抗議するデモが行われた。

民主主義にとってデモとはなにか?

拡大集会で、音楽を聴きながら反戦を訴える人たち=2020年1月12日、東京都新宿区

 新宿で開催された「#OccupyShinjuku0112」は、肉球新党やアンティファ(antifa:反差別主義者の総称)のような市民有志を中心に、労働組合の動員に頼らずとも3000人が街中を歩いた。作家の室井佑月や野党の国会議員も多数参加した。

 デモ行進後には、新宿アルタ前広場にサウンドシステムが組み上がり、アフターパーティ「#0112新宿プロテストレイヴ」が行われた。DJの行松陽介や、つい先日世界的クラブカルチャー雑誌「mixmag」の表紙を飾ったMars89ら、いまの日本のクラブシーンが揃い踏みだった。

 では、そもそも民主主義にとってデモとはどういうものなのか。こうした基本的な意義を改めて確認してみたい。

政治的有効性感覚と投票率

 しばしば勘違いされているのが、政治についてのイメージである。それは多くの人々が考えている選挙=政治というものだ。だが、選挙で政治のすべてが解決できるわけではない。

 投票率が上がれば、われわれの意思が政治に反映されると言えるかもしれない。けれども、選挙だけでわれわれの意思が十全に反映されるのかというと、そう考えるのは誤りであろう。

 選挙であれデモであれ、われわれ自身のとった行動は、どれだけ国政や地方政治に反映されているか。自身のアクションが意義深く有効だと感じられることを、政治学では政治的有効性感覚といい、その高さを指数化する試みがなされている。

 それによると、指数が62%と比較的高いイギリスの国政選挙における投票率は67.3%である。これに対し、同じ西欧諸国のドイツの投票率では、投票率が76.2%にもかかわらず、政治的有効性感覚は38%と低い。イタリアは投票率は72.9%だが、有効性感覚は28%とさらに低い。アメリカも指数は75%と高いのに、投票率は56.8%だ。

 ちなみに日本は、政治的有効性感覚18%で投票率52.7%と、先進国で最もふるわない。隣国の韓国の指数30%・投票率58.0%よりも段違いに低い。

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筆者

五野井郁夫

五野井郁夫(ごのい・いくお) 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

高千穂大学経営学部教授/国際基督教大学社会科学研究所研究員。1979年、東京都生まれ。上智大学法学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了(学術博士)。日本学術振興会特別研究員、立教大学法学部助教を経て現職。専門は政治学・国際関係論。おもに民主主義論を研究。著書に『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』(NHKブックス)、共編著に『リベラル再起動のために』(毎日新聞出版)、共訳書にウィリアム・コノリー『プルーラリズム』(岩波書店)など。

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