藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
三木元首相所蔵の「56年宣言」交渉秘密文書が母校の明治大学に
後日公開されたPDFの目録を開くと、計573ページ……圧倒される思いだったが、1ページ目にいきなり「おや?」と思うタイトルがあった。
「日ソ交渉会談録(昭和三十一年九月-十月 於東京及びモスクワ) 1957年7月 欧亜局第3課」
「昭和三十一年」、つまり1956年の10月といえば、1年5カ月にわたる日ソ国交正常化交渉が決着し56年宣言が調印された時だ。そこに至る大詰めの「会談録」を、翌年に外務省のソ連担当課がまとめたものということになる。詳細な会談録であれば、すごい資料だ。
なぜなら、外務省には「作成から30年経った文書は公開」という原則はあれど、より上位に「継続中の交渉に関する過去の記録は非公開」という大原則があるからだ。56年宣言で北方領土問題が片付かず、それを日本が解決しようとする平和条約締結の交渉が今も続く中、外務省は決着した56年宣言の交渉もこの大原則にあたるとして、今も詳細を明かさない。
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