亀裂広げた両首脳の誤算と無策、目標は「先延ばし」に
2020年01月24日
日本と韓国の両政府は、いつ炸裂するかわからない爆弾を抱えたまま、新年を迎えた。
韓国大法院(最高裁)が2018年秋に、日本企業に元徴用工らへの賠償を命じる判決を出し、原告が韓国内の日本企業の資産を差し押さえている問題だ。
これまでの政府間協議で論点はほぼ出尽くしている。根本的な解決の道筋を描くには、双方の政治指導者による政治判断が欠かせないが、どちらもそれができない。
互いの国内事情から、激しくやり合う場面は消えた。しかし、すでに差し押さえられている日本企業の資産は近く、売却(現金化)が可能になる。「Xデー」は刻々と迫る。両政府の間では、その先延ばしが当面の目標になりつつある。
安倍晋三首相は1月20日、通常国会の施政方針演説で韓国について「元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国」とした上で、「であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げること切に切に期待」すると述べた。
安倍首相は5年前の施政方針演説から、それまで韓国に対して「基本的価値を共有する」としてきた表現を使わなくなった。今回、久しぶりの復活となったが、再評価したのではなく、むしろ早く「価値観を共有する国」に戻れと言わんばかりだった。
ただ、一昨年10月に韓国の大法院(最高裁)が元徴用工らを働かせた日本企業に対し、賠償を命じた確定判決を出した直後とは、韓国関連の表現ぶりが様変わりしている。
徴用工判決の直後には「暴挙」「国際法に基づく国際秩序への挑戦」(いずれも当時の河野太郎外相)と攻撃的な表現が安倍政権内部から相次いだが、最近はもっぱら諭すかのように、約束の順守を呼びかける。
トーンの変化は安倍政権の大誤算がもたらした。
徴用工判決が出た後も適切な対策をとろうとしない文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、安倍首相官邸は早い時期から韓国への報復措置の検討を各省庁に指示していた。
多くの案が出た中で、官邸は、最も強硬な措置を選択した。韓国の繁栄の要でもある半導体関連を含む輸出規制強化だ。協議の窓口である外務省はもちろん、素案を出した経済産業省の一部からも「劇薬すぎる」と慎重論が出たが、官邸は押し切った。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください