南スーダンのがばいばあちゃんの心をうたれた一言
野球人、アフリカをゆく(21)難民生活で孫に教えた生きるための「規律」の大切さ
友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事
すべてが整然としたコンパウンド
そんなジュバ市内の中心地近くに、ピーター、ウィリアム、私を乗せた防弾車が着いた。大通りから数十メートル入った未舗装の路地に、トタン板づくりの高い塀に囲まれたコンパウンドがあった。ジュバ市内ではこのコンパウンド方式の住宅が多い。一定の敷地を壁で囲み、その中にいくつかの住居があり、共同生活をしている形式だ。
「ここに僕のおばあさんが住んでいます」と言いながら、ウィリアムが目立たない小さなドアを押し開いて入ってゆく。私とピーターが続いて中に入った瞬間、目を疑った。

調理場にいるおばあさんとウィリアム。
五つくらいの質素な佇(たたず)まいの建物が配置されている。土塀で屋根はトタン板。建物に囲まれた中庭の地面は土だ。しかし、その空間は、すべてが整然としていた。隅から隅まで清掃が行き届いている。余計なものは何一つない。
「ウィリアム、綺麗な敷地だね」。感心して思わず漏らす私に、「おばあさんはきれい好きなんです」と返すウィリアム。「奥のキッチンにおばあさんがいます」といいながらウィリアムが向かう先に、スカーフを頭に巻いた年配の女性が、小屋の中で、座って火を使いながら調理をしている後ろ姿が見えた。
「おばあさん、〇*%$#▽」と、ジュバアラビックで背中越しになにやら話しかけるウィリアム。「お客さん連れてきたよ。日本人の野球の監督なんだ」と言っている。たぶん。
すると、振り向いたおばあさんはやおら立ち上がった。その表情は柔和でにこやかながら、背筋がピンとして芯があるように見え、凛(りん)とした雰囲気。どことなく、佐賀県に住んでいた私の父方の祖母に雰囲気が似ていたように感じた。
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