大企業の景況感も消費も回復するだろう。中小企業の深刻な状況から目を背けるな
2020年01月28日
昨秋、消費税が8%から10%に上がってから4カ月近くがたつ。消費税増税はその間、日本の社会や経済にどんな影響を与えているのか? 長年、消費税のあり方を追及してきたジャーナリストの斎藤貴男さんが、消費税についてさまざまな角度から考えるシリーズ。今回は、この4カ月の実態、その背後に潜む問題について論じます。(論座編集部)
前回の「消費税の悪魔性 仕入れ税額控除の許されない実態」に続いて「仕入れ税額控除」について書く予定だったが、看過できない状況があるので、当面、別の話題を先行させることにしたい。
通常国会が1月20日に始まった。安倍晋三首相は代表質問で、廃棄したとされている昨年の「桜を見る会」の招待客に関する調査を拒否。汚職にまみれた統合型リゾート(IR)事業を、それでも推進する意向を示し、あるいは自衛隊を国会審議も経ずに、防衛省設置法の「所掌事務」にある「調査・研究」名目で中東に派遣したことを、武器の行使に該当する恐れはない」と、根拠も示さずに正当化した。
もはやすっかり見慣れた光景ではある。
安倍氏は開会初日の施政方針演説でも、「桜」をはじめ、IRの問題や、公職選挙法違反の疑いで相次ぎ辞任した閣僚らの任命責任に、まったく触れなかった。沖縄の米軍普天間飛行場返還と辺野古新基地建設についてさえ、直接的には述べなかったのだから、なんとも異様だ。
一方で、例によって“アベノミクス”を自画自賛。「日本経済はこの7年間で13%成長し、来年度予算の税収は過去最高となりました」「公債発行は8年連続での減額であります」などと胸を張った。ウソである。
過去最高云々は事前の、それも賞味期限切れの見通しだった。すでに来年度の以前に今年度の補正予算案が下方修正され、税収も前年度割れが必定になっている。増収傾向にあるのは確かでも、近年の税収は、税率の引き下げや租税特別措置の乱発で大幅に減少した法人税収を消費税の増収で賄う形で推移しており、来年度は後者が所得税を抜いて最大の税目となる見込みだ。つまり、経済政策が成功した果実などではまったくない。
東京五輪・パラリンピック開催の意義も繰り返し強調された。「日本全体が力を合わせて」「「国民一丸となって」の連発が、「一躍総活躍社会」の宣伝に繋げられていく展開からは、2020年大会招致の目的が「国民統合」と「国威発揚」でしかない実態を思い知らされるばかりだった。
要は、都合の悪いことは何もなかったことにする。逆に、自らを強く、大きく見せるためなら平気でウソをつくのである。
ちなみに、8度目となった第2次安倍政権の施政方針演説で、普天間と辺野古が取り上げられなかったのは、今回が初めてだ。過去最高となったのは、税収ではなく、“なかったことにする”手口だった。
以上のような分析は、しかし、一部の新聞でもなされている。本稿が指摘しておかなければならないのは、今回の施政方針演説が、昨年(2019年)10月の消費税率引き上げと、その後の経過を何も語らなかったことである。
問題点が山積し、国論が二分された中で強行された増税だった。ならば、それでどうなったのかを報告するのは政治指導者の義務なのに、安倍首相はやはり“なかったことに”して恥じない。それでも誰も怒らない日本国民とは、つくづく奴隷根性の塊だ。
だから私が書く。
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