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詳細不明の新型コロナウイルスに政府がとるべき対応

合理的・科学的な政策と“演出効果”を含めた果断な実行が必要。筋近いな憲法改正論議

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相(中央)=2020年1月31日、国会内

 昨年から中国・武漢で発生していた新型コロナウイルス感染症の2月1日現在での中国での感染者は1万1700人を超えました。日本国内でも1月31日時点で17人の感染者が確認され、武漢からの邦人を乗せたチャーター便が次々と日本に到着し、新型コロナウイルス感染症を指定感染症とする政令の施行が2月1日に前倒しされるなど、感染拡大とともに、これを巡る動きが慌ただしさを増しています。

 新型コロナウイルス感染症については、現時点では詳細が不明で、正直書きづらい所もあるのですが、むしろ「分からないということを前提にどう対応すべきか」という観点で論じさせていただきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症について分かっていること

 いま「詳細不明」と書きましたが、新型コロナウイルス感染症について、現時点で分かっていることもいくつかあります。それらを列挙すると以下の通りになります。


①潜伏期間は2週間程。症状が軽く気が付かない人も少なくない(日経ビジネス2020年1月29日)。
②現在単純計算での重症化率は17%、死亡率は2%(重症化した時の死亡率は13%)。ただし、潜在的感染者が多数いるとみられ、全感染者に対する正確な死亡率は不明(より低下する可能性がある)。(参考
③特効的治療法はない。ただし、適切な対症療法を行えば治癒することが多く、中国以外で死亡者は出ていない(参考)。
④「1人の感染症患者から何人に感染させるか」を表す基本再生産数(R0; R naught)は、1.4~2.5で、おおよそ2程度(ヤフーニュース2019年1月26日WHOホームページ)。
⑤空気中に飛散するウイルスによる「空気感染」はせず、くしゃみ等で飛散した飛沫のウイルスによる「飛沫感染」、皮膚や粘膜などが直接接触した際にウイルスが感染する「接触感染」によって感染すると考えられる。(日経ビジネス1月29日

 では、これらの事実と、それ以外については詳細不明であることを前提に、政府は、新型コロナウイルス感染症に対してどのような対策を講ずるべきでしょうか。

完璧な水際対策は不可能

 現在、政府は新型コロナウイルス感染者を国内に入れない「水際対策」に躍起です。後述する通りその意義を否定するものではないのですが、上記の①の通り、新型コロナウイルス感染症では、症状の出ない軽症の感染者が多数いるとみられ、「完璧な水際対策」は実際問題、不可能と考えられます。

 仮に、「完璧な水際対策」を実現しようとすると、中国からの旅行者全員にPCR検査(遺伝子検査)を実施するか、中国からの渡航を全面的に禁止するするしかなくなりますが、その費用は甚大で、およそ現実的ではありません。

 また、仮にそれを実施しても、陸続きの東南・中央アジアやロシア経由で感染が入ってくる可能性を排除することは不可能です。地球上には77億人がひしめき合って移動しながら暮らしています。たとえは悪いかもしれませんが、我々は「地球」という動物園の唯一つの檻の中で、幾つかの群れに分れて暮らしている一種類の動物(人間)であり、ウイルスのタイプにもよりますが、一つの群れで発生したウイルスが他の群れに伝播することを完璧に防ぐのは不可能なのです。

チャーター機の第3便で羽田空港に到着した武漢からの帰国者ら=2020年1月31日

感染者数・感染確率を「臨界点」以下に抑えよ

 では、我々は新型コロナウイルス感染症に対して打つ手がないかというとそうではありません。

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