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安倍政権の強硬策が生んだ韓国市民の「日本離れ」

訪日客は激減、「信頼の日本製」から国産品へ、欧米企業の売り込みも激しく

箱田哲也 朝日新聞論説委員

 韓国社会のパンドラの箱を開けてしまったのか。

 徴用工問題で韓国の文在寅(ムンジェイン)政権を動かそうと日本政府が踏み切った輸出規制強化は、歴史問題であっても黙ってはいないという安倍政権ならではの試みだった。だが、実際にこれまでに起きているのは、事態の打開どころか、韓国の長年の課題だった「日本依存からの脱却」である。

ソウルのバスで聞いた「もう日本はいいかなあ」

日韓拡大昨年5月、大阪の街は、多くの韓国人観光客でにぎわっていた。女性たちは大量の土産を両手に笑顔だったが……

 昨年暮れ。ソウル中心部、青瓦台と呼ばれる韓国大統領府近くに向かう小型乗り合いバスは、何人詰め込めるかを競っているかのように超満員だった。

 ブレーキを踏むたび、つり革を持ったままの我が身は傾くが、もとのまっすぐな体勢に戻れない。バランスを大きく欠いた弥次郎兵衛状態に何とか耐えていると、座席にいる2人の女性――職場の先輩とみられる女性と後輩とおぼしき女性――の会話が耳に入ってきた。

 先輩 あなたこの前、1週間ぐらい休んでたよね?
    どっか行ってきたの?
 後輩 えっ。あっ。
    (小声でつぶやくように)こんなとこで言っていいのかなあ
 先輩 大丈夫よん
 後輩 (声をひそめて)ゆ・ふ・い・ん♡
 先輩 えっ!!
 後輩 (口元を右の人さし指で押さえ)シー!
 先輩 (こちらもひそひそと)で、どうだったの?
 後輩 (耳元で)も、サイコー。
    3年ぐらい前に行った時は温泉はごった返して、
    朝食ビュッフェもだいぶ並んだんだけど、今は余裕。
    行くなら今よ、オンニ!
      (オンニ=女性が目上の女性を呼ぶ時の「お姉さん!」の意)
 先輩 へえ。でも私はもう日本はいいかなあ。
    何回か行ったし。やっぱ今はベトナムっしょ

 何と言うことのない会話だが、韓国社会の雰囲気や日本観、最近のトレンドが詰まったやりとりだった。

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筆者

箱田哲也

箱田哲也(はこだ・てつや) 朝日新聞論説委員

1988年4月、朝日新聞入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、97年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、94年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。99年からと2008年からの2度にわたり、計10年、ソウルで特派員生活をおくった。13年4月より現職。

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