訪日客は激減、「信頼の日本製」から国産品へ、欧米企業の売り込みも激しく
2020年02月05日
韓国社会のパンドラの箱を開けてしまったのか。
徴用工問題で韓国の文在寅(ムンジェイン)政権を動かそうと日本政府が踏み切った輸出規制強化は、歴史問題であっても黙ってはいないという安倍政権ならではの試みだった。だが、実際にこれまでに起きているのは、事態の打開どころか、韓国の長年の課題だった「日本依存からの脱却」である。
昨年暮れ。ソウル中心部、青瓦台と呼ばれる韓国大統領府近くに向かう小型乗り合いバスは、何人詰め込めるかを競っているかのように超満員だった。
ブレーキを踏むたび、つり革を持ったままの我が身は傾くが、もとのまっすぐな体勢に戻れない。バランスを大きく欠いた弥次郎兵衛状態に何とか耐えていると、座席にいる2人の女性――職場の先輩とみられる女性と後輩とおぼしき女性――の会話が耳に入ってきた。
先輩 あなたこの前、1週間ぐらい休んでたよね?
どっか行ってきたの?
後輩 えっ。あっ。
(小声でつぶやくように)こんなとこで言っていいのかなあ
先輩 大丈夫よん
後輩 (声をひそめて)ゆ・ふ・い・ん♡
先輩 えっ!!
後輩 (口元を右の人さし指で押さえ)シー!
先輩 (こちらもひそひそと)で、どうだったの?
後輩 (耳元で)も、サイコー。
3年ぐらい前に行った時は温泉はごった返して、
朝食ビュッフェもだいぶ並んだんだけど、今は余裕。
行くなら今よ、オンニ!
(オンニ=女性が目上の女性を呼ぶ時の「お姉さん!」の意)
先輩 へえ。でも私はもう日本はいいかなあ。
何回か行ったし。やっぱ今はベトナムっしょ
何と言うことのない会話だが、韓国社会の雰囲気や日本観、最近のトレンドが詰まったやりとりだった。
韓国からの訪日客は、昨年6月までは前の年を少し下回っていたものの、夏からの巻き返しで記録更新に期待がかかっていた。そんな矢先の7月、日本政府が徴用工問題での韓国への報復措置を発表。それに反応して日本を訪れる人が一気に減った。8月からの半減の勢いは止まらず、結局、トータルでは前年比25%減と激減した。
日本政府は五輪イヤーでもある今年は、訪日客4千万人の達成を目指す。
2018年に3千万の大台を突破した時の内訳をみると、4人に1人が韓国から。その隣国からの失速は大きな痛手となった。
先のバスの中での会話のように、韓国ではいま、歴史や国際問題に関する思想信条に関係なく、旅行先に日本を選ぶこと自体が、はばかられる雰囲気が漂う。そんな中でも大分・湯布院を訪れた後輩とみられる女性のような人がいるので、何とかつながっているのが現状だ。
ソウルの観光業界の関係者は言う。
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