東京地検特捜部の上司を「頭凝り固まってる」と嘆息した担当検事
(32)陸山会事件で「虚偽捜査」の標的となった小沢元秘書の石川知裕氏に聞く・中
佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長
「文春砲」が炸裂して、小泉進次郎環境相が政治資金から女性との逢引き代を出していたことが暴露された。政治団体には法人格がないために、本来政治資金として使われなければならない資金を個人目的に流用してしまう事例が後を絶たない。
そんなよどみ切った政界にあって、小沢一郎は珍しいほど清潔な経理システムを採用している。小沢自身が、政治団体代表としては「小澤一郎」、個人としては「小沢一郎」という表記の使い分けをして、政治資金と個人資金との区別をはっきりさせているのだ。

東京地裁に入る石川知裕さん=2011年9月26日、東京・霞が関
「陸山会事件」では、個人としての「小沢一郎」が政治団体代表としての「小澤一郎」に4億円を貸し付け、「小澤一郎」がこの4億円を銀行に定期預金として組み入れて担保とし、改めて4億円を借り入れた。秘書の住宅用の土地を買う代金、つまり政治資金ということを明確にするためだ。
しかし、検察はこの動きの目的と清潔な動機を理解できず、4億円の裏に「ヤミ献金」があるのではないかと見立てた。預金担保融資を使って事業資金と個人資金を明確に分けるやり方は個人事業主の間ではよく使われているが、不勉強な記者たちはこのことを知らず「疑惑報道」を繰り広げた。
この手法にそれほど習熟していなかった元秘書で元衆院議員の石川知裕はひとつ手順を間違え、より複雑な動きをすることになってしまった。しかし、このことは不自然ではあるが、もちろん何ら罪になるようなことではない。
それにもかかわらず石川は「冤罪」に落とされ、国会議員の立場を失った。ミスにもならない誤記記載を文字通り針小棒大に喧伝し、「疑惑」プロパガンダを繰り広げた検察と当時のマスコミの罪は限りなく重い。
石川の「冤罪」もさることながら、小沢一郎という国民的政治家の貴重な時間を奪い取り、国民から新しい日本政治の可能性を取り去った。
検察がいかに「秋霜烈日」の精神から遠いところにいるか。石川のインタビューなどから考察を加えてみる。