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小沢一郎「安倍首相の権力私物化に協力した官僚がみんな出世する」

(34)小沢一郎が安倍政治を語る・上

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

桜を見る会「安倍首相には最低限の良識や常識が全然ない」

――それから、昨年から非常に問題になっている「桜を見る会」の私物化の問題ですね。招待客の中には、山口県の安倍首相の選挙区有権者が850人いるということがわかっています。

 それから、それを含む最低でも5~6000人いるとされる安倍事務所推薦の招待客。この人たちは、会招待の対象である功労者、功績者ではありません。

 これは明らかに税金を使った公職選挙法違反、買収、供応にあたるのではないでしょうか。そしてまた、税金の目的外使用ということで財政法違反でもありますね。

小沢 当然そうでしょう。これは告発されていますね。

――はい。背任で告発されていますね。

小沢 要は、検察が動かなければ仕方ないんです。

 韓国の検察は大統領と対決してまでやっているのに、日本の検察、警察は官邸の顔色をうかがっているんだからしょうがない。

 国としての日本は、その意味ではものすごい後進国だと思います。後進国で全体主義社会みたいなものです。

 ちょっとひどすぎる。今までの歴代総理もいろいろとありましたが、それぞれに最低限の良識や常識を持っていました。しかし、安倍さんにはそういうものが全然ない。

拡大「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(中央)=2019年4月13日、東京都新宿区の新宿御苑

――そういうことですね。ひどい警察、検察の話で言えば、小沢さんがまさに体験された陸山会事件というデタラメ捜査の案件がありましたが、最近の典型的な事例では、伊藤詩織さんのケースが指摘されます。

警察の「ブラックボックス」

 ジャーナリストの伊藤詩織氏がTBS元ワシントン支局長の山口敬之氏に乱暴されたとして告訴した事件は、告訴状を受けた高輪警察署が逮捕状を取るまで捜査しながら逮捕直前でストップがかかった経緯を含めて、社会に衝撃を与えた。
 事件の経緯を生々しく描いた伊藤氏の著書『ブラックボックス』(文藝春秋)によれば、山口氏から乱暴されたのは2015年4月3日深夜。酒に強い伊藤氏は、山口氏と飲食中に初めて気を失い、意識を取り戻した時は山口氏のホテルの部屋で乱暴されていた。伊藤氏は乱暴目的で気を失わせる「デートレイプドラッグ」の使用を疑っている。
 伊藤氏は高輪署に告訴したが、警察の捜査を指揮する検察は当初から消極的だった。それでも一線捜査員が積極的に捜査し逮捕状を取った。山口氏が米国から一時帰国する2015年6月8日に成田空港で逮捕する予定になっていたが、その直前に警視庁の中村格刑事部長(当時)がストップをかけた。
 週刊新潮の取材にその事実を認めた中村氏は刑事部長の直前まで菅義偉内閣官房長官の秘書官を務めており、山口氏自身は安倍首相に関する著作を幻冬舎から2冊出していた。
 結局、山口氏は書類送検されたが、東京地検は不起訴処分とし、検察審査会は不起訴相当の議決を出した。
 しかし、一方で伊藤氏は山口氏に対して1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こし、山口氏も「社会的信用を奪われた」などとして、慰謝料1億3000万円を求めて反訴した。東京地裁は判決で、山口氏の性暴力を認定して伊藤氏の訴えを認め、山口氏の請求を棄却した。
 安倍首相に近く、安倍氏の関連本を2冊著している著者が、菅官房長官の元秘書官に逮捕直前に救われるという構図が一般の憤激を呼び起こし、健全な社会常識に与えた傷口は今も疼き続けている。

――山口敬之氏から乱暴されたということで被害に遭った伊藤さんが自ら名前と顔を出して告発しました。

 それだけでも衝撃的なことだったのですが、現場警察は準強姦罪で逮捕状を取ったのに、逮捕直前になって当時の中村格警視庁刑事部長がストップをかけるという前代未聞のことまで起こりました。この中村刑事部長は直前まで菅官房長官の秘書官で、さらに山口氏は安倍首相を褒めあげる本2冊を書いた著者だったのですね。

 こういう事態は、全警察への国民の信頼を大きく揺るがしたと思います。

小沢 

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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