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桜を見る会問題 我々野党の責任を嚙み締める

国家国民への真摯な思いから湧き上がる正義感、倫理観、使命感、責任感に基づく追及を

小川淳也 衆議院議員

「収支が赤字の事業」は記載できない?

 まず、政治資金収支報告から見てみたいと思います。

 総理の収支報告書には年3回程度、東京で行う政治資金パーティーと毎年地元下関や長門で行う新年会が記載されており、これらは毎年適正に法令に従って行われていることがわかります。

 ところがこの桜を見る会前夜祭だけが、毎年、決まって報告書に記載されていないのです。

 同じ後援会主催の行事なのに、なぜ前夜祭だけが収支報告書に記載されていないのか。他の行事がきちんと記載されているだけに、逆に不自然なのです。

 あえて言えば、安倍家は伝統ある政治家一家です。事務所スタッフも含めて熟練の人たちが多いはずだと想像します。従って政治資金規正法の制度や趣旨、公職選挙法の実務等を十分理解し、慎重に運用していると思われるのです。

 従ってこれらが単なるケアレスミスや、意図的でない偶然の不記載ではそもそもありえない。すべてには意図があり、目的がある。そう考えるのが自然です。

 この点総理は参加者の参加形態を問題にし「前夜祭は一人一人の参加者が自ら契約主体としてホテルに集い、会費をホテルに払っている。ホテルからホテル名義の領収書を受け取っているから、後援会に収支は発生していない」という大変苦しい答弁を繰り返しています。

 800人もの人がホテルと一人一人契約するはずがありませんし、これ自体が極めて理解に苦しむ珍答弁です。はっきり言えば単に屁理屈の言い逃れだと思います。

 しかし、問題はこうした参加者の形式や支払いの形態が、事の本質ではないということです。後援会収支が発生しないような形式をあえてとった理由、あるいは取らざるを得なかった理由が、もっと言えばそう説明せざるを得ない、実質的な理由が、他にあるのではないかということです。

 偶然の不記載や意図的でない記載は安倍家の伝統からして想定しがたい以上、そこには確信犯的かつ実質的な理由を見出さなければなりません。

 ここでふと思うことは、収支報告書に適正に記載されている東京の政治資金パーティー、地元の新年会には共通点があることです。それは毎年、収支が黒字であるという事実です。つまり、かかった経費より多くの会費を集めているので、少なくとも安倍事務所による有権者への利益供与を疑われることはないのです。

 そうすると、もしかしたら収支報告書に記載しない、あるいは記載できない事業とは、収支が黒字ではなく、赤字の事業なのではないか。すなわち集める会費以上に経費がかかり、飲食や催しを実施する際に、何らかの形で安倍事務所、安倍後援会から差額を補填せざるを得ない事業が存在するという構図です。

 収支が黒字の事業は堂々と報告書に記載し、収支が赤字の事業は記載できない。そこで参加者が一人ひとり主体的にホテルと契約し、参加している、との苦しい詭弁、珍答弁に追い込まれているのではないか、ということです。

 国会質疑の中で総理は私に対し「これは小川さんのレッテル貼りだ」と、よく使われるフレーズで反論されました。

 しかし私からすれば「こんなに簡単に剥がせるレッテルはないはず」であり、総理はそうすべきだと言い返したのです。

拡大衆院予算委で、野党統一会派の小川淳也氏の質問中、自席から発言する安倍晋三首相=2020年2月5日

 ホテル会場の見積書、領収書なりを取り寄せて開示すれば、たちどころにその疑念は晴れることになります。こんなに重大な疑惑を、こんなに簡単な方法で晴らすことが出来るとすれば、それを隠して行わない理由は一体何なのか。返って不思議、不自然でなりません。

 やはりそこには何らかの開示できない「実質的な」理由があるのではないか、と疑われても仕方ないのです。やはりこの疑われる状況を放置し続ける総理自身に、大きな責任があると言わざるを得ません。

 政治資金規正法違反の疑いは、実は公職選挙法違反の疑いから来ている。「書かない」のではなく、「書けない」のではないかと疑われる。両者の問題は一体不可分、実質面と形式面において、切り離すことの出来ない疑惑だと思うのです。


筆者

小川淳也

小川淳也(おがわ・じゅんや) 衆議院議員

1971年香川県高松市生まれ。衆議院議員5期目。立憲民主党・無所属フォーラム幹事長特別補佐。高松高校、東京大学法学部卒業。1994年自治省入省。沖縄県庁、自治体国際化協会ロンドン事務所、春日井市役所などを経て、2003年民主党より香川県第1区にて立候補するも惜敗。2005年初当選。2009年総務大臣政務官、2017年民進党役員室長。著書に『日本改革原案 2050年成熟国家への道』(光文社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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