サンジェイ・クマール・バルマ駐日大使に聞く日本とインド、そして中国のこと……
2020年02月15日
中国と並び立つ古代からの文明大国であり、人口大国であるインドとはどんな国なのでしょうか?
日本にとっては、中国の習近平政権の「一帯一路」に対抗し、アメリカとともに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を掲げるにあたり、戦略的に頼りにする相手です。トランプ米大統領は近くインドを訪問する予定で、安倍晋三首相も昨年末にインドの治安を理由として延期した首脳会談の時期を探っています。
ただ、その一方で、日本が力を入れてきた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉から突如離脱したり、西部での新幹線建設が難航したり、日本政府をしばしば困惑させるインド。一筋縄でいかない強(したた)かな大国と、私たちはどう付き合うべきなのでしょうか?
北京や香港でも勤務、流暢な中国語を操る「中国通」でもあるサンジェイ・クマール・バルマ駐日大使に、日本とインドの関係のありようををききました。
サンジェイ・クマール・バルマ
1965年生まれ。北部ビハール州出身。インド工科大学物理学修士。88年に外交官になり、在香港総領事館、中国、ベトナム、トルコの大使館などでの勤務を経て、スーダン共和国で大使に就く。2019年1月から現職。ヒンディー語、英語のほか、中国語も堪能。
――インドは中国の習近平政権による巨大経済圏構想「一帯一路」は支持していません。
インドに属する領土の扱いなどについて同意できない点があり、支持していません。関係する会合にも参加していません。
――隣国パキスタンを中心にした経済回廊構想が「一帯一路」の一角だからですか?
それも含んでいます。
――「一帯一路」に対抗するべく、アメリカ、日本、オーストラリアなどは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」、東南アジア諸国連合(ASEAN)は「インド太平洋アウトルック」と、「インド」をキーワードにした地域戦略も語られています。
我々も、インド太平洋海洋イニシアチブ(IPOI)を唱えています。これらの戦略は競合するものではなく、人々の交流や連結性、海洋安全保障など、共有できる要素があります。地域をグループ分けして分断するものではなく、相互につながりあう概念、戦略だととらえています。インド洋は古くからそうした舞台になってきたのです。今に始まった話しではありませんよ。
――隣国として台頭する中国の存在が、日本とインドの関係をより強く結びつける要因になっているのではないですか。
中国に限るわけではありませんが、地域に悪影響を及ぼすことがあれば、ともに声をあげることは大事です。ただ、第三者の存在を基盤にした二国関係はもろいものです。持続的に発展させることはできません。
――昨年末に予定されていた日印首脳会談は、会場になるはずだった北東部グワハティの治安情勢の悪化を理由に延期されたままです。具体的な日程は固まりましたか。
インドと日本の関係を理由に延期したわけではありません。政府レベルで再調整しているところですが、具体的な日程は決まっていません。
インドと日本は首脳どうしの関係がよく、戦略上の衝突もなく、むしろ補完関係にある。地域や国際関係においても、ほとんどすべての問題で、多少の違いはあっても似た立場で臨める関係です。
――予定されていた会談では、自衛隊とインド軍が物資を融通したり輸送などの役務で協力したりする「物品役務相互提供協定」について、実質合意する方向で調整が進んでいました。そのほか、日本とインドは具体的にどのような点で協力できますか。
互いの弱みを補い、強みにするという意味では、「人口」が大きいでしょう。
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