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「一帯一路」支持せず。新幹線建設は難航…強かなインドの真意と計算

サンジェイ・クマール・バルマ駐日大使に聞く日本とインド、そして中国のこと……

吉岡桂子 朝日新聞編集委員

 中国と並び立つ古代からの文明大国であり、人口大国であるインドとはどんな国なのでしょうか?

 日本にとっては、中国の習近平政権の「一帯一路」に対抗し、アメリカとともに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を掲げるにあたり、戦略的に頼りにする相手です。トランプ米大統領は近くインドを訪問する予定で、安倍晋三首相も昨年末にインドの治安を理由として延期した首脳会談の時期を探っています。

 ただ、その一方で、日本が力を入れてきた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉から突如離脱したり、西部での新幹線建設が難航したり、日本政府をしばしば困惑させるインド。一筋縄でいかない強(したた)かな大国と、私たちはどう付き合うべきなのでしょうか?

 北京や香港でも勤務、流暢な中国語を操る「中国通」でもあるサンジェイ・クマール・バルマ駐日大使に、日本とインドの関係のありようををききました。

拡大インタビューにこたえるサンジェイ・クマール・バルマ駐日インド大使=2020年1月9日、東京のインド大使館、吉岡桂子撮影

サンジェイ・クマール・バルマ
1965年生まれ。北部ビハール州出身。インド工科大学物理学修士。88年に外交官になり、在香港総領事館、中国、ベトナム、トルコの大使館などでの勤務を経て、スーダン共和国で大使に就く。2019年1月から現職。ヒンディー語、英語のほか、中国語も堪能。

「一帯一路」を支持しないわけ

――インドは中国の習近平政権による巨大経済圏構想「一帯一路」は支持していません。

 インドに属する領土の扱いなどについて同意できない点があり、支持していません。関係する会合にも参加していません。

――隣国パキスタンを中心にした経済回廊構想が「一帯一路」の一角だからですか?

 それも含んでいます。

――「一帯一路」に対抗するべく、アメリカ、日本、オーストラリアなどは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」、東南アジア諸国連合(ASEAN)は「インド太平洋アウトルック」と、「インド」をキーワードにした地域戦略も語られています。

 我々も、インド太平洋海洋イニシアチブ(IPOI)を唱えています。これらの戦略は競合するものではなく、人々の交流や連結性、海洋安全保障など、共有できる要素があります。地域をグループ分けして分断するものではなく、相互につながりあう概念、戦略だととらえています。インド洋は古くからそうした舞台になってきたのです。今に始まった話しではありませんよ。


筆者

吉岡桂子

吉岡桂子(よしおか・けいこ) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。1989年に朝日新聞に入社。上海、北京特派員などを経て、2017年6月からアジア総局(バンコク)駐在。毎週木曜日朝刊のザ・コラムの筆者の一人。中国や日中関係について、様々な視座からウォッチ。現場や対話を大事に、ときに道草もしながら、テーマを追いかけます。鉄道を筆頭に、乗り物が好き。バンコクに赴任する際も、北京~ハノイは鉄路で行きました。近著に『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』(https://www.amazon.co.jp/dp/4093897719)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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