政権に都合のいい恣意的な人事・法解釈がまかり通るようだと国家社会は成り立たない
2020年02月19日
新型コロナウイルスや新型肺炎の感染が世間の耳目を集めていた1月31日、安倍晋三内閣は東京高検の黒川弘務検事長の任期を、特例として半年間延長することを閣議決定した。
この奇怪な決定に対し、世論、メディアはもとより、検察の内部からも無効、あるいは違法ではないかという厳しい批判の声が上がっている。
検察庁法によると、検察トップの検事総長の定年は65歳で、ナンバーツーの東京高検検事長以下の検察官の定年は63歳と定められている。この閣議決定によって、本来なら2月7日の誕生日に63歳になり、定年で退任するはずの黒川氏が、8月7日まで在任できることになった。
森雅子法相は2月3日の衆院予算委員会で野党の質問に答え、「東京高検管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため」と説明したが、かつてないこの閣議決定に関する説明としては、あまりにも粗雑で説得力に欠ける。「重大かつ複雑困難事件」は常に存在しているだろう。むしろ、この答弁によって、閣議決定に込められた“真の意図”について、さらに不信感が強まった。
なぜ突然、このような横車が押されることになったのか?
この問題については、メディアの見解はほぼ足並みが揃っている。
現在の稲田伸夫検事総長は、8月14日の誕生日で65歳の定年を迎える。検事総長の任期はほぼ2年というのが慣例だ。2018年7月に就任していることを考えると、今年の7月に退任するのが順当だが、黒川氏の定年を8月7日まで延ばせば、稲田氏の後任の検事総長に任命することが可能になる。
報道によると、黒川氏の定年が延長される前、庁内ではすでに新しい人事構想が示されていたという。すなわち、2月7日に退任する黒川氏の後任には、林真琴・名古屋高検検事長が横滑りし、さらにその林氏が稲田氏の後任の検事総長に就任するはずだったらしい。
退任する予定の黒川氏の送別会は2月5日に開かれる予定だったというし、名古屋高検から東京高検に移る予定の林氏の送別会はすでに終わっているという。
この一件に関しては、大きな問題点が二つある。
ひとつは、安倍政権に都合のいい検察体制をつくろうとしているのではないかという疑念を、多くの人に抱かせたという点である。
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