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新型コロナウイルスとの長期総力戦。安倍政権で戦えるか?

「初期段階」から「流行段階」へ。不公平と噓で国民の信頼を失った政権には荷が重い?

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

新型肺炎について説明する、加藤勝信・厚生労働相=2020年2月17日、東京・霞が関

 さる2月15日、加藤勝信厚生労働大臣が記者会見で「感染経路が判明していない事例がある。以前とは状況は異なっている」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大が新たなフェーズに入ったことを事実上、認めました。(朝日新聞デジタル2月15日

 今までは感染者が少数で感染経路を特定できる状態だったのですが、2月18日現在日本の感染者は66人(ダイヤモンド・プリンセス号の434人は現在は日本の統計に入っていませんが、下船して日本で治療を受けるようになれば日本の統計に入ります)まで増え、その少なからぬ人の感染経路が分かっておらず、もはや不特定多数に感染が広がっている状況だと認めざるを得ません(厚生労働省HP

「フェーズ」で変わるウイルス感染対策の戦術

 不謹慎かもしれませんが、ウイルスの感染対策を「戦闘」に例えると、感染の「フェーズ」によって取るべき戦術は大きく変わります。

 感染者が限られ、感染経路が特定できる「初期段階」では、海外からという意味だけではなく、特定個人からの感染拡大の防止も含めて、「水際対策」がとられることになります。この場合は、特定されている相手に対して一気にリソースをつぎ込み、物量で圧倒する「短期局地戦」的対応、すなわち、特定されている感染源及び可能性のある感染経路を洗い出し、すべての人を厳重に隔離して治療するのが有効です。

 これに対し、感染者が不特定多数で、感染経路が特定できない場合には、極論するなら検査、洗い出しを行うべき対象は1億2000万人の全国民に広がります。このように感染が広がった「流行段階」において、あちこちで「短期局地戦」をしていたら、リソースがいくらあっても足りません。また、限られたリソースをある特定の対象だけに集中すると、他の対象に対する対応が疎かになり、そちらで感染が広がって逆効果になってしまう可能性もあります。

「流行段階」における最善の策

 従って、すでに多くの識者が指摘しているとおり、「流行段階」では「長期総力戦」的対応、すなわち感染源や感染ルートの特定は必要な範囲にとどめ、治療についても軽症の人は必ずしも隔離をせず、感染に留意して自宅や一般病棟で療養してもらい、重症例を重点的に隔離・治療することが有効になります。

 具体的には、
①限られた医療リソースを社会全体に適切に配分しつつ、状況に応じて必要な所に柔軟にわりふる、
②国民一人一人が感染症のリスクと負担を共有しつつその制御・鎮圧に協力する、
③長期にわたり、①②を実行しながら情報を共有・検証し、それをアップデートしてその時々に最善の策を講じる、
ことが必要です。

 では、日本は現政権・政府の下で、①~③を長期間着実に実行して、新型コロナウイルス感染症を鎮圧することは出来るのでしょうか?

朝の通勤・通学で混み合う道ではマスクを着用する人が目立つ=2020年2月17日午前8時1分、東京都中央区

「初期段階」の対応は失態続き

 まずもって、「初期段階」における政府の対応は、「後手後手」というよりも、ほとんど失態続きといっていいものでした。

 私は、中国全体のからの渡航を制限すべきとは今も思いませんが、感染のアウトブレークが明らかとなった時点で、武漢からの渡航制限は当然ながら必要でした。ところが、

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