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香港区議選から学ぶ投票率アップのために必要なこと

民主化デモはどうして高投票率につながったのか?選挙プランナーが考えた

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

拡大香港の区議会選挙で投票所の前に列を作る有権者ら=2019年11月24日、筆者撮影

 昨年11月に行われた香港の区議会議員選挙では、民主派の圧勝と同時に、投票率が急上昇したことが大きな話題となりました。前回区議選の47%から71%と実に24ポイントも上昇したわけですが、民主主義の先進国・地域において投票率が20ポイント以上も上昇することは非常にまれなことです。

 香港と同様に小選挙区制度を導入している日本の衆議院議員選挙では、小選挙区制度導入後に投票率が70%を超えたことはありません。(小選挙区制度導入後最も高かったのは平成21年の69.28%であり、70%を超えたのは最後の中選挙区制度であった平成2年の73.31%まで遡る必要があります)

 筆者は、この香港区議選が香港民主化デモの分水嶺になると同時に、民主化運動下における選挙が今後の日本における選挙に大きなヒントをもたらすと考え、昨年10月と11月の2回、香港まで取材に行きました。そこで見た香港の選挙戦の様子から、選挙プランナーの立場として、日本の低投票率を改善するために必要なことについて考えたいと思います。

デモ隊の籠城戦に込められた戦略

 11月の区議選の1カ月前の10月に筆者が香港を訪れたときは、香港警察と民衆との市街地における衝突が過激化したころでした。

 香港でも屈指の観光地である尖沙咀(チムサーチョイ)で催涙弾が使われる一方、想像を遙かに超えた数の民衆が香港を応援するアンセムを市街地のあちらこちらで歌うなど、デモの勢いは香港全土に広がっていました。ゲリラ的に行われていたデモ活動を、香港警察は抑え込めていないのが実情で、デモ活動で民主化を達成することができるのではという期待も、市民の間では高まっていました。

 ところが、11月の香港区議選の直前に、デモ隊は香港中文大学や香港理工大学を占拠して籠城戦を展開、香港全土でおこなわれたゲリラ戦は急速に収束に向かいました。市民生活における民主化デモのウェイトが小さくなったと同時に、警察が大学を封鎖する様子を見て、デモ活動そのもので民主化は達成できないという無力感を多くの人が抱いたといいます。

 籠城戦はデモ活動としては失敗だったと言われていましたが、選挙後に振り返ってみると、香港市民に「デモ活動だけでは民主化は達成できない」という悲壮感を漂わせる戦略もあったことがわかります。「デモ隊があれだけ頑張っているのにも関わらず、結果的に香港政府は何も政策に顧みないではないか、あとは選挙で投票することで民意を示すしか方法がない」という強い感情を、香港市民の間にかき立てたのです。

 これが、香港区議選の投票率急上昇の要因のひとつだと私は考えます。

拡大香港理工大学前に陣取ったデモ隊=2019年11月17日、香港、冨名腰隆撮影

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筆者

大濱﨑卓真

大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント

1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。

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