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パラサイト、BTS…古家正亨が語る「世界の韓流」

DJ古家正亨が語るウラオモテ(上)

市川速水 朝日新聞編集委員

「Toy」聴いて異次元の衝撃

――韓国の大衆文化と出会ったきっかけを教えてください

 「僕の場合、歌がきっかけでした。23年前のことです。それまで洋楽やJ-POPを聞いて育ったのですが、アジアの音楽については興味も関心もありませんでした。というより、触れる機会がなかったからと言えるかもしれません。

 そんな僕が初めて、韓国を代表するシンガーソングライターとして知られているユ・ヒヨルのプロジェクト『Toy(トイ)』の曲を耳にした時に『いったい何なんだ、この音楽は?』と衝撃を受けました。

 東洋的だけど、日本っぽくない。西洋的なんだけど、同時に演歌っぽい感じもする。歌詞の意味も分からないのに、なぜか、もの悲しい。

 韓国には、日本と近いようでまったく違う歌の文化があることをこの瞬間、知ったのです。異次元の体験でした」

――1990年代後半、韓流の少し前でアジア金融危機のころですね

 「地元の北海道医療大学を卒業後、カナダに留学していた時のことでした。大学3年の時からFMラジオ局『FMノースウエーブ』でDJをしていたのですが、卒業してプロの道に進む前に、英語はもちろん、自分の専攻である音楽療法を学び、人生経験を積みたいと思い、環境の良さも含めてカナダ留学を決意しました。

 大学の英語のクラスには、多くのアジア人、特に韓国人がたくさんいました。それまで韓国のことに何ら関心がなく、韓国に関する知識もほとんどありませんでした。

 今は分かりませんが、僕の学生時代は歴史の授業で現代史は重視されず、卒業間近にさらっと教科書を読む程度で終わってしまったので、日本と韓国の関係について、もちろん自分の勉強不足ということもありますが、ほとんど理解していなかったんです。

 あえて言うなら、ニュースで流れる(北朝鮮の国営通信である)朝鮮中央通信の人のイメージ。そして反日的な人々という程度の認識です。カナダでの最初の印象も決して良くはなく、むしろなるべく関わりたくないというのが本音でした。

 ただ、僕の顔が韓国の当時の人気コメディアンに似ていたようで、韓国の人たちから僕に積極的に声をかけてくるようになったんです。それがきっかけになり、自然といつの間にか、韓国人コミュニティーの中にいるようになりました。

 そんな韓国との出会いの過程で、僕の誕生日にその韓国人の友人の一人がプレゼントしてくれたのが『Toy』のCDだったんです」

――それで韓国留学もしようと…。話がずいぶん飛躍しているようですが

 「カナダで僕は、自分がいったい何者なのだろうと考え始めていました。アジア人なのだけれど『アジアの中の欧米人』という意識が、自分のどこかにあったのではないかと気づき始めたんです。

 でもカナダでは『中国人か、韓国人か』と聞かれる。最初は『いや、日本人、ジャパニーズだ』と、自分は中国人でも韓国人でもなく日本人であることを主張していたんです。そう、思われたくなかったから。

 ただ日本人ということに誇りを持って満足しているのは自分だけで、他人から見たら、何人だろうとどうでもいいわけです。そこで初めて自分はアジア人だという自覚が生まれました」

 「だとすれば、アジアの文化とは何か? 韓国とはどんな国なのか。日本より遅れているイメージしか持っていませんでしたし、特に韓国や中国の現代史については何も知識がありませんでしたし。百聞は一見に如かず。まずは韓国に行ってみたい。自然とそういう気持ちが芽生え始めたんですね。

 『韓国に住んでみたい、留学してみたい、とにかく行ってみたい』と韓国人の友達に相談しました。すると『IMF金融危機の時に、なぜ日本人がわざわざ韓国に行かなくてはならないのか。せっかくカナダに来たのに。日本人が韓国で学ぶことなど何ひとつないでしょう』と猛反対されたんです。

 あれだけ母国に熱い気持ちを持っている『愛国心の塊』のようなイメージの韓国の人なのに、不思議と全員が僕の韓国行きを反対したんですね。

 でも結局、そんな友達のおかげもあって、カナダですべての手続きをし、カナダからそのまま日本に帰国せずに韓国に向かい、高麗大学に留学しました」

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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