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新型コロナをめぐる日本の情報発信は“ガラパゴス”

オープンデータ化を進めれば、情報を活用したサービスも生まれる

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

新型コロナウイルス感染症についての会見にのぞむ加藤勝信厚労相=2020年2月20日、東京・霞が関

 新型コロナウイルス感染症が日本列島にも上陸してから1ケ月が経ちました。これまで関係省庁による防疫や感染拡大防止の対応が行われてきましたが、この記事を書いている現在、感染者は拡大の一途をたどっている状態です。また、情報の錯綜や不十分な情報公開も、日本国内のみならず世界から指摘を受けている状態です。

 私が代表を務めるジャッグジャパン株式会社では2月17日、日本でも流行が確認されている新型コロナウイルス感染症の広がりを視覚的に確認できる「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」を公開しました。厚生労働省や各自治体が発出する感染者の発生についてのステートメントをもとに、現在の状況をわかりやすく視覚化(ビジュアライズ)することに特化したサイトです。

(現在弊社が公開している「都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップ

新型コロナウイルス感染者マップを公開した理由

 今回、「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」を公開するに至った理由は、各国政府の症例に関する情報公開に比較して、日本政府の情報公開のあり方が不十分ではないかと考えたからです。

 現在、日本における新型コロナウイルスの感染者発生の情報公開は、概ね都道府県ないしは保健所政令市単位の地方公共団体が主となって記者発表を行い、これらの報告を集約して厚生労働省が1日1回状況の報告を行っています。また、厚生労働省から内閣に設置された新型コロナウイルス感染症対策本部にも数字が上がり、対策本部のホームページにも会議録として掲載されます。

 ところが、厚生労働省の報道発表資料における「新型コロナウイルスに関連した患者の発生(n例目)について」では、地方自治体が発出した記者発表をそのまま転載したものも多く、ここ数日の事例においては、厚生労働省のホームページ上にPDFをJPG化して貼り付けたり、自治体の公開しているPDFへの直接リンクだけとなったりして、情報がまとまっていない状況になっています。

日本のオープンデータスキームは「1つ星」

 本論から少し逸れますが、自治体の公表しているPDFへの直接リンクは、自治体側がURL構造を変更したらリンクが無効となることや、サーバー負荷の観点からも望ましいものではありません。新型コロナウイルス感染症対策本部のホームページに掲載されている対策本部の議事次第にも集約された数字が掲載されていますが、パワーポイントに表を貼り付けた資料となっており、複数の情報が同一セル内に押し込められる形でデータ化されるなど構造的に問題があり、かつ改ページの都合から連続したデータにもなっていません。多言語化も不十分です。

(新型コロナウイルス感染症対策本部 第11回(令和2年2月18日開催)配付資料より)

 情報業界では、政府の情報公開の指針の目安として「オープンデータ」の考え方がありますが、現在の日本政府の情報公開のあり方は、オープンデータとしてはまったくもって不十分と言わざるを得ません。

 オープンデータの世界では、活用しやすさを基準とした公開のレベルによって5段階のレベルがあり、「5つ星オープンデータスキーム」と言われています。より加工しやすく利用しやすいデータ公開ほど星は増えますが、上記のような現在政府が行っている情報公開のあり方は、オープンライセンスで公開はしているものの構造化されておらず、加工しにくいデータとして、この基準に則れば「1つ星」と判定されるものです。

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