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新型肺炎に「人民戦争」で挑む中国共産党への違和感

国際社会には支援を求め、国内の批判は力で封じる。感染拡大の真相解明はできるのか

藤原秀人 フリージャーナリスト

 新型コロナウイルスの感染拡大、新型肺炎の蔓延により、中国では人々の暮らしや経済活動が大きな痛手を負っている。ところが、この大国を率いる中国共産党は、初動の失敗もものかわ反転攻勢に打って出る。

 トップの習近平総書記(国家主席)は陣頭指揮ぶりをメディアで誇示し、肺炎対策は後手に回ったという批判を封じ込める。外に向かっては国際社会の支援と支持を強調し、内では毛沢東以来の「人民戦争」により国民を力で抑えこむ。

 公正な原因究明や感染者らの人権尊重など、新型肺炎との闘いで本来求められるべきものは、すっかりかすんでしまっている。

新型肺炎対応に自信を見せる習総書記

拡大北京市内の疾病予防センターを2月10日に視察した、中国の習近平国家主席=2020年2月10日、新華社(AP)

 「中国はすべてを動員、配置し、国を挙げて団結し、人民戦争を本格化させている」

 習総書記は2月18日、フランスのマクロン大統領との電話会談でこう述べた後、「中国には強大な能力と総合的な実力があり、必ずこの戦いに勝利出来る」と、新型肺炎にうまく対応できるとの自信を表した。

 習氏はこの日、イギリスのジョンソン首相とも電話で話し、「中国は人民の生命安全を最重視し対策を徹底させており、現在明らかな効果が出ている」と楽観的な見方を示した。と同時に、イギリスからの支援に謝意を示し、中英友好も強調した。

 いずれも中国共産党機関紙「人民日報」の報道だが、中国からは最近になって、新型肺炎に関して前向きのニュースが続いている。習氏はマクロン大統領との会談でも、肺炎の流行が経済に与える影響は一時的との見方を示したうえで、「すでに定めた経済・社会の発展目標は実現できると信じている」とまで語っている。


筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト

元朝日新聞記者。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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