国際社会には支援を求め、国内の批判は力で封じる。感染拡大の真相解明はできるのか
2020年02月24日
新型コロナウイルスの感染拡大、新型肺炎の蔓延により、中国では人々の暮らしや経済活動が大きな痛手を負っている。ところが、この大国を率いる中国共産党は、初動の失敗もものかわ反転攻勢に打って出る。
トップの習近平総書記(国家主席)は陣頭指揮ぶりをメディアで誇示し、肺炎対策は後手に回ったという批判を封じ込める。外に向かっては国際社会の支援と支持を強調し、内では毛沢東以来の「人民戦争」により国民を力で抑えこむ。
公正な原因究明や感染者らの人権尊重など、新型肺炎との闘いで本来求められるべきものは、すっかりかすんでしまっている。
「中国はすべてを動員、配置し、国を挙げて団結し、人民戦争を本格化させている」
習総書記は2月18日、フランスのマクロン大統領との電話会談でこう述べた後、「中国には強大な能力と総合的な実力があり、必ずこの戦いに勝利出来る」と、新型肺炎にうまく対応できるとの自信を表した。
習氏はこの日、イギリスのジョンソン首相とも電話で話し、「中国は人民の生命安全を最重視し対策を徹底させており、現在明らかな効果が出ている」と楽観的な見方を示した。と同時に、イギリスからの支援に謝意を示し、中英友好も強調した。
いずれも中国共産党機関紙「人民日報」の報道だが、中国からは最近になって、新型肺炎に関して前向きのニュースが続いている。習氏はマクロン大統領との会談でも、肺炎の流行が経済に与える影響は一時的との見方を示したうえで、「すでに定めた経済・社会の発展目標は実現できると信じている」とまで語っている。
自信の根拠は定かではない。中国国家衛生健康委員会の専門家グループを率い、外国からも高く評価されている鍾南山医師が2月11日、ロイター通信の取材に対して、流行は「今月の半ばか下旬に、おそらくピークを迎える可能性がある」と述べ、「4月ごろに終息すると望む」と語ったことが、習氏の楽観論の背景にあるのだろう。
中国外交の広告塔といえる王毅国務委員兼外相は2月15日、ドイツで開かれた「ミュンヘン安全保障会議」で講演し、中国本土以外での感染は全体の1%に満たないと指摘し、「我々は世界への拡散を効果的に防いでいる」と述べた。各国からの支援には感謝を表明し、「局地的な問題と世界的な問題が互いに転化する時代、いかなる国も独善的であることはできない」と国際協調の必要性を訴えた。そして、「夜明けが今やってきた。曙の光が見えてきた」と語ってみせた。
だが、こうした中国当局の発言には、どこか違和感を覚える。
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