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日本の統治機能の劣化にどう向き合うか―新型コロナウイルス対応でも見られたガバナンス不全

感染拡大を防ぐため必要な専門的知見が十分に組み込めていない日本の危機

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

 この国の統治機能(ガバナンス)が著しく損なわれていると思わざるを得ない出来事が次から次へと起こっている。

 批判を受けると説明責任を果たすことなく二人の閣僚が唐突に辞任し、国会会期中にかかわらず雲隠れし、ようやく公の場に出てきても説明を拒否する。

 首相主催の「桜を見る会」についても問題が報じられると「今年は中止」を早々に決めるが、過去に誰がどういう基準で招待されたか、などについて十分な説明責任が果たされたとは国民の多くは思っていない。

 IR関連汚職問題や東京高検検事長の定年延長問題なども不透明の一語に尽きる。道義的にも国民に範を示すべき総理大臣補佐官の公私混同的な問題も理解を超える。

 新型コロナウイルス感染拡大問題については海外の報道を見ると日本の初期対応は不十分・不適切だとの評価が多い。

 民主主義の下で、ガバナンスを云々する前に政府がまず従わなければいけないルールは、透明性の確保であり説明責任の履行なのだろう。これが統治の大前提だ。

 政治権力が説明を渋り真正面から向き合っているように見えないのは、明らかにできない理由があるからではないかと疑念を持つ。問題が明らかになれば責任をとらなければならない。

拡大閣議に臨む安倍晋三首相(中央)=2020年2月21日

政府ガバナンスにおける二つの重要側面

 昨今、大手民間企業において「企業ガバナンス」には厳しい目が光り、株主など利害関係者(ステークホールダー)の利益を守るため、経営者を監視する仕組みが取り入れられている。社外取締役制度の導入や指名委員会、報酬委員会などにより、企業の幹部人事や報酬に透明性を持たせようという試み、さらには経理監査制度の充実などだ。

 これだけグローバリゼーションが進めば企業統治についてもグローバルスタンダードに合せないと競争力を失う。

 ところが統治(ガバナンス)の本元である政府のガバナンスについては日々改善されていくどころか、民主主義制度の基本的原則が損なわれ劣化しているのではないかと思う。

 政府のガバナンスにはどういう問題があるのか。昨今のガバナンスの劣化を考えるとき、二つの重要な側面がある。

 第一には、「政策ガバナンス」だ。

 正しい施策を実行していくためにも、専門的知見が十分反映されなければならないが、近年は大衆迎合的、いわゆるポピュリズム的傾向が強くなってきた。ポピュリズム的傾向の大きな問題は、政府が専門的知見を離れ、世論をベースに行き過ぎた政治的配慮をし、結果的には国益を損なうことだ。

 第二には、「チェックとバランス」だ。

 資金や人事、情報をコントロールする権力は、常にチェックされ監視されないと、驕り横暴になり、過ちを犯す。本来のチェック機能である国会やメディア、あるいは政治権力からは距離を置くことが求められる検察や警察の機能が保全されているかという問題だ。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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