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新型コロナウイルス、大地震…。想定外の危機に必要な為政者の心構え

「危機管理」が揺らぐ安倍政権。不安の悪循環から脱するため、過去から何を学ぶか

曽我豪 朝日新聞編集委員(政治担当)

一斉に噴出した長期政権の歪み

 事実、たとえば日本経済新聞社の世論調査によれば、初動の屋内避難指示が批判を浴びた2016年の熊本震災の直後、政府の対応を「評価する」が53%で「評価しない」が35%だったのに対して、今回の新型肺炎に関しては、「評価する」40%、「評価しない」50%と逆転する。さらに熊本震災の場合は、内閣支持率を押し上げる効果がみられたが、今回はそれも真逆である。

 つまり、長期政権を下支えしてきた「危機管理」の確かさ自体が揺らいでいるのだ。

 くわえて、これも政権が選択した消費増税の影響もあり、昨年10〜12月期のGDP(国内総生産)は予想を超えるマイナスを記録。さらに、国際市場も軒並み株価を下げ、もうひとつの身上だった「アベノミクス」も揺らぐ。「桜を見る会」や検察の定年延長問題をめぐっても、国会で疑惑は晴らされることはなく、ここにきて長期政権の歪(ひず)みが一斉に噴き出した観がある。

新型肺炎の不安除去を求める世論

 このままでは、悲願の憲法改正はもちろんのこと、自民党総裁「4選」を含め、首相の政権戦略は根底から覆ることになろう。だいいち、これまで状況をリセットし政権をテコ入れして来た衆院解散・総選挙さえも、自在にその時期を選ぶ能力を失ってしまうに違いない。

 もっとも直近の世論調査を見れば、内閣支持率は急落するものの、立憲民主党など野党の政党支持率は一向に上がる様子はない。世論は無党派層の増大という「踊り場」に依然としてとどまる。

 どの政党の誰が、この政権に代わって新たな将来への道筋を示し得るか、安倍政権が立ち直る可能性はないのか――。世論は全体状況を冷静に見極めようとしているように見える。政権の打倒や擁護といった極端な政局論は別にして、なにより世論はいま、景気と深く連動し始めた新型肺炎危機への不安を除去する確かな方策を希求しているはずだからだ。

 ならば、この局面で為政者に必要な心構えとは何か、それを見定める必要があろう。

拡大衆院予算委で答弁する安倍晋三首相=2020年2月28日


筆者

曽我豪

曽我豪(そが・たけし) 朝日新聞編集委員(政治担当)

1962年生まれ。三重県出身。1985年、東大法卒、朝日新聞入社。熊本支局、西部本社社会部を経て89年政治部。総理番、平河ク・梶山幹事長番、野党ク・民社党担当、文部、建設・国土、労働省など担当。94年、週刊朝日。 オウム事件、阪神大震災、など。テリー伊藤氏の架空政治小説を担当(後に「永田町風雲録」として出版)。97年、政治部 金融国会で「政策新人類」を造語。2000年、月刊誌「論座」副編集長。01年 政治部 小泉政権誕生に遭遇。05年、政治部デスク。07年、編集局編集委員(政治担当)。11年、政治部長。14年、編集委員(政治担当)。15年 東大客員教授

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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