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新型コロナ感染を判定するPCR検査は「拡大すべきではない」の不条理

非科学的な医療関係者の消極論。情報伝達が不徹底だった政府がやるべきことは

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

検査消極論は非科学的な主張

 ところが、こうした「政府の情報伝達の不徹底」はあまり注目されることなく、SNS上では、「PCR検査の対象は拡大すべきではない」という議論が、主に医療関係者を中心に強力に巻き起こっています。

 この議論においては、室月淳医師による、臨床検査の「感度」「特異度」からPCR検査の限界を論じた記事などが広く読まれ、様々な議論において、「PCR検査の対象は拡大すべきではない」とする根拠として用いられています。

 もちろん、この記事に書かれている「PCR検査の感度を90%、特異度を90%とすると、感染率2%の集団において陽性的中率は15%であり、この集団に対してPCR検査を行うと、『陽性』と診断された人のうち本当の感染者は15%に過ぎず、医療リソースが無駄遣いされてしまう」というのは、医学以前の単純な数学的事実であり、議論の余地はありません。

 その一方で、「感染率2%」は市中を普通に歩いている人にPCR検査を行うときに用いるべき数字で、たとえば「38度台の熱が4日間継続した人」の集団における感染割合ではありません。この集団における感染割合が仮に30%であるなら、市中の感染率が2%であっても、この集団に対するPCR検査の陽性的中率は80%に達し、PCR検査を正当化するのに十分なものである様に見えます。

 そして、当然のことながら、市中の感染率が上がり、「38度台の熱が4日間継続した人」の集団における感染割合も上昇すれば、この陽性的中率も当然アップします。

 もちろん、「『38度台の熱が4日間継続した人』の集団における感染割合30%」は、私が議論のために設定した数字に過ぎません。実際のところ、この数字がどれ程であるかは、今現在の日本において、新型コロナウイルスやインフルエンザをはじめとする感冒の症状を呈する他の疾患の流行状況、臨床経過、重症率等により、確かなデータは、これから収集しない限り、おそらくどこにもありません。

 要するに、現在の厚生労働省の基準が、「ここしかない絶対の線引き」である根拠はどこにもないわけで、事実、ほかならぬ厚生労働省自体が2月17日にその基準を緩和しているのです。

 「すべての人へのPCR検査」が、PCR検査の科学的限界を踏まえていない非科学的な主張だというのはその通りですが、

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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