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新型コロナウイルス感染でフランス人がマスクを…

ヨーロッパに広がる新型コロナウイルスの感染で風俗習慣から政治まで地殻変動が

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

 新型コロナウイルスがヨーロッパをも揺るがせはじめた。新型ウイルス感染による新型肺炎の死者が、イタリアで12人、フランスで2人(2月26日現在)になったことで、“地殻変動”が起きそうな気配が漂う。

 ヨーロッパ人にはなじみが薄かったマスク着用の習慣が根付きそうなことにくわえ、欧州連合(EU)に反対する極右政党が「国境封鎖」を叫ぶなど、政治面での影響も予想される。

Sinersi/shutterstock.com

2人目の死者はパリ近郊の中学教師

 フランスの2人目の死者は、パリ近郊ワーズ県在住の男性の中学教師(60)だ。フランスはいま、「2月休暇」の最中で、学童は2月中旬から約2週間の休みに入っている。フランス保健省によると、教師は休暇開始早々の2月14日夜から発熱などの症状があり、近隣の病院に入院。症状が悪化したため、パリのピティエ・サルペトリエ公立病院に24日夜に緊急転院。検査の結果、新型肺炎と判明し、26日に死去した。

 フランスでは2月14日に中国人観光客の男性(80)が死亡、フランス国内での初の死亡例となった。1月25日に新型肺炎患者が判明して以来、今回死亡した男性を含めて18人の感染者が判明している。主に中国人で、すでに14人が回復して退院、4人が入院中だが、「症状は安定している」(保健省、2月26日現在)という。

 仏保健省によると、この教師は新コロナウイルスに感染しそうな「危険な地区」への滞在や往来歴などは一切なしだ。どこで感染したかが目下のところ、まったく不明。それだけに、不気味だ。

 パリに住む者としては、自分がいつ、どこで新型コロナウイルスに感染し、新型肺炎に陥るリスクがあるか、まったく予期できないので、不安が募る。いまは、じっと自宅に閉じこもっている以外ないのか――。

目立ちはじめたマスク姿

 テレビのニュースによると、教師が最初に入院したパリ郊外クレーユ公立病院付近では、「死去」のニュースが流れた2月26日午後から住民のマスク姿が目立ちはじめたという。パリ市内では、病院の一部の医師、看護師などを除いて、街中でマスクを着けた人にお目にかかったことはない。

 「マスクをする習慣がない」「なんだか恰好悪い」「息苦しい」「ギャングみたいだ」「持っていない」などの理由で、インフルエンザが蔓延している時でも、パリっ子はもとより、フランス人のマスク姿は皆無だったが、これからは、マスク姿を拝めることになるかもしれない。

 年末年始に帰国のした折に日本から持参したマスクがあるが、私自身も目立ちたくないので、マスクは着けたくないなと思っていた。マスクをしたアジア人の私の周囲からさっと人が引いたら、やっぱり、ちょっと寂しいからだ。

 ヴェラン保健相は26日の会見で、「20万枚のマスクの用意がある」と表明。疫病の専門家もこれに同調し、「マスク着用」の有効性を訴えている。「握手はするな」「手を洗え」「ハグはもってのほか」

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