花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
極右との連携を巡り激震に揺れる与党は安定を取り戻せるか
いよいよ先行きが不透明になってきた。2月5日のドイツ旧東独、チューリンゲン州を巡る混乱を受け、10日、メルケル首相の与党キリスト教民主同盟(CDU)のアネーグレット・クランプカレンバウアー党首が辞任の意向を表明、併せて、2021年の総選挙に首相候補として立候補するつもりがないことを明らかにした(拙稿「欧州はポピュリズムに多党分立、日本は自民一強」参照)。
メルケル後継問題が振り出しに戻ってしまった。誰がこの後ドイツの舵取りをしていくのか。2021年まで残留の意向だったメルケル首相は、早期退陣を迫られるのか。ドイツでは極右政党と緑の党の躍進が著しいが、この新たな政治の流れにどう対応していくのか、CDU内の路線闘争も絡み、俄然ドイツ政治に不透明感が漂う。
米英が頼りにならず、仏は国内不満で政権の権威が傷つけられたままだ。中露はそういう隙を虎視眈々と狙っている。EUがしっかりしないと自由民主主義陣営の足元さえ揺らぎかねない。ドイツだけは、と思っていたが、そのドイツも、今や心もとない限りとなった。成り行き次第では、国際政治全体が揺らぎかねない。
ことの発端は、チューリンゲン州首相の選出だ。昨年10月の同州選挙で、5%しか獲得しなかった自由民主党(FDP)のトーマス・ケメリッヒ氏が州首相に選出されたが、裏にCDUと極右、ドイツのための選択肢(AfD)の支持があった。これが報じられるや、ドイツ国内は蜂の巣を突いたようになった。よりにもよって極右の支持を求めるとは何事か。特に、与党CDUに対する風当たりが強かった。極右と一緒になってケメリッヒ選出に動いた。極右との連携など、ドイツではタブー中のタブーだ。その一線を与党が越えてしまった。CDUの一地方支部の判断が、ドイツ全体のちゃぶ台をひっくり返してしまった。
2018年12月、クランプカレンバウアー氏がCDU党首に選出された。同氏自身はドイツ弱小州ザールラントの州首相だった。同州地方選挙で目覚ましい活躍をとげ、それがメルケル首相の目に留まり、メルケル子飼いとして中央に引っ張られた。メルケル首相の下で幹事長を務め、後継として党首に指名された。
CDU党首は次期首相含みだ。メルケル首相の任期は2021年まで。そこで16年にわたるメルケル時代が終わりその路線を継ぐクランプカレンバウアー党首が次期首相になる。ドイツの進路は定まったかに見えた。それが全てご破算だ。
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