メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

新型コロナで揺れる韓国、外交政策も揺れる

強硬な「民族重視派」が台頭、文政権内で定まらぬ主導権

箱田哲也 朝日新聞論説委員

GSOMIA「再破棄案」が浮上

拡大「強制動員を謝罪し 賠償判決を理解しろ」などと書かれたプラカードを持ち、ソウルの日本大使館に向かってデモ行進する元徴用工の支援者ら=2019年8月15日

 戦時中に朝鮮半島から日本に連れてきて働かせた徴用工をめぐる問題は、日韓両政府間で「嵐の前の静けさ」が続く。

 そんな中、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権内部では、外交政策をめぐり、これまでなりを潜めていた民族重視派がまたぞろ台頭。日韓の防衛協定の「再破棄」を模索し始めた。試みはいったん不発に終わったものの、新型コロナウイルス対応で批判にさらされる文政権内部では、これらの声がいまだくすぶる。

 「ともに危機を克服し、未来志向の協力関係に向けて努力しよう」

 日本の植民地支配下に起きた最大の独立抵抗運動の記念式典があった3月1日、文大統領は演説でこう日本に呼びかけた。徴用工問題での対立が解けない中、日本にいかに言及するか注目されていたが、新型肺炎対策という両国が直面する喫緊の課題に焦点をあわせた。

 だが、文大統領をとりまく政府与党の内側では、さまざまな主張が飛び交っている。

 韓国紙・中央日報は2月12日付け朝刊の1面トップ記事で「GSOMIA廃棄論 青瓦台で再浮上」と報じた。

 GSOMIAとは、日韓間で軍事情報をやりとりする際の保護協定のことである。

 日本が徴用工問題の報復措置として輸出規制強化を打ち出したことへの対抗措置として、文政権は昨年8月、この協定を延長しないと宣言。協定の効力がいよいよ消滅する間際の同11月になって、米国の圧力を背景に日韓双方が譲歩し、韓国側は前言を撤回。破棄宣言を取り消した経緯がある。

 その破棄を再び検討するという中央日報の記事が出た際、日本政府当局者のみならず、東京の韓国大使館幹部らにも「そんなはずはあるまい」といった受け止めが多かった。しかし、ほどなく青瓦台(大統領府)で不穏な動きが出ている事実が浮き彫りになってきた。

 韓国政府とすれば、昨年11月の破棄撤回は、日本側が輸出規制問題で善処することを前提にした「条件つき」の協定延長。3カ月近くたっても日本の措置が改善されていない現状に強い不満が募る。

 前提が守られぬのなら再び破棄を表明すべし。そんな声は主に、北朝鮮との関係改善、つまり南北間の和解と協力に比重をかける民族重視派から発せられた。

 日本側が再三にわたって懸念を表明した結果、韓国政府は最近になり、現在のところ最も信頼できるルートを通じて「何とか回避できそうだ」と伝えてきた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

箱田哲也

箱田哲也(はこだ・てつや) 朝日新聞論説委員

1988年4月、朝日新聞入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、97年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、94年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。99年からと2008年からの2度にわたり、計10年、ソウルで特派員生活をおくった。13年4月より現職。

箱田哲也の記事

もっと見る