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共和党はトランプに乗っ取られた

[176]ワシントンDC、トランプ支持者、高校闘争半世紀シンポジウム……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

2月5日(水) 朝4時半にホテルをチェックアウトして、ワシントンDC行きの飛行機に乗ったはいいが、出発時刻になっても全然飛ばないのだ。すると、技術的なトラブルがあってチェックしているとの機長自身のアナウンスがあった。ええっ? 先の目途がなかなか立たない。乗客のなかには諦めて降りて行った人もチラホラ。ただ僕らの場合、取材機材が大量にあって、それをすでに機内に積み込んでしまっている。困った、困ったと思っていたら、何とか2時間近く遅れて飛び立つという。まあ、ソビエト時代のアエロフロートとか、イランで7時間遅れだったことを考えれば大したことないさ。

 ワシントンDCでは、元共和党上院議員のトム・デイビス氏に会って、いかにトランプが共和党を乗っ取っていったかを語ってもらうことになっていた。DCについて空港から直行すれば何とギリギリ予定時間通り間に合うことになった。何という慌ただしい取材の連続か。まあ、こんなものだ。

 トム・デイビス氏の仕事場のオフィスは、いかにもワシントンDCのハイソサイエティの人々が居住するビルの空間で、カメラマンチームの腕の見せどころいう感じの場所だった。会議室はガラス張りで、中で誰と誰が話し合っているかが角度によって見えたり見えなかったりする特殊ガラスで仕切られていた。

 トム・デイビス氏はメディア慣れしていて、無駄なことを一切言わない。曰く「トランプという人物はテレビのリアリティショーで視聴者の心を掴んでのし上がった人物だ。リアリティショーなんか見たこともないエリート共和党議員とはそこが違う。従来の共和党員がトランプを好きになれないとしても、トランプの背後には熱狂的な支持者たちがいる。共和党はそういう意味でトランプに乗っ取られた。もう誰も彼には逆らえない。一番、トランプが支持されている理由は好調な経済だ」と。簡にして要を得た答えに感心してしまった。

 休む間もなく取材し続けて若干疲れた。支局まで歩いていける近くのホテルにチェックインして休憩。コーディネーターの池原麻里子さんから、勝手知ったるEストリートシネマで、Oscar Nominated Short Filmsを上映していると聞いて、午後2時45分からの回に飛び込む。アカデミー賞にノミネートされた短編映画5本の特集上映。一本が20分前後だが、これが揃いも揃ってとても面白かった! その5本とは、①Brotherhood ②Nefta Football Club ③The Neighbor's Window ④Saria ⑤A Sister。個人的には④と③がとても気に入った。20分くらいでここまで深いものが表現できるんだなと。

 その後、アウトレットで少し買い物をしてからホテルで眠る。トランプ大統領に対する上院の弾劾評決で、弾劾相当の演説を共和党議員として唯一人行ったミット・ロムニー上院議員のスピーチに驚いた。何と感極まったのかロムニー氏は途中10秒ほど言葉が出なくなった。議員生命を賭してのスピーチだったのだろう。共和党穏健派でかつては2期目のオバマと大統領選挙を争った人物だ。もともとアウトサイダーだったトランプとは全く違う出自だ。政治とは残酷なものだ。日本にはロムニーはいない。

トランプ氏がツイートした動画。「造反」したロムニー氏の写真に、「SLICK(口先だけ)、SLIPPERY(信用できない)、STEALTHY(こそこそする)」などとやゆする言葉が並ぶ拡大トランプ大統領がツイートした動画。「造反」したロムニー氏の写真に、「SLICK(口先だけ)、SLIPPERY(信用できない)、STEALTHY(こそこそする)」などとやゆする言葉が並ぶ

 CNNはこのシーンと、きのうのトランプ大統領の一般教書演説で、ナンシー・ペロシ下院議長が、演説終了と同時に演説原稿のコピーをビリビリ破り捨てるシーンを繰り返し流している。それにしても一般教書演説は、まるでリアリティTVショーだった。ベネズエラの「暫定」大統領までゲストとして登場させていたのには驚いた。

トランプ大統領の一般教書演説終了後、原稿を破るペロシ下院議長=2020年2月4日、ワシントン、ランハム裕子撮影拡大トランプ大統領の一般教書演説が終わった後、原稿を破るナンシー・ペロシ下院議長=2020年2月4日、ワシントン、ランハム裕子撮影

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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