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米中ロの利害が交錯する中央アジア

日本にも中長期にわたる確固とした戦略が必要だ

塩原俊彦 高知大学准教授

 米国務省は2020年2月、「中央アジア向け合衆国戦略(2019-2025)」を公表した。中央アジアは、現代地政学の租、ハルフォード・マッキンダーが「ハートランド」と呼んだ、北極海と内陸以外に流れ込む川をもたない地域、アムール川上流以西からヨーロッパ東部に至る地域で、南はイラン高原以北という場所の中心部分をなす。ゆえに、その地政学上の価値ははかりしれない。

 ここでは、米国に加えてロシアや中国がともに覇権拡大をねらう中央アジアの現状について概括してみたい。

ロシアの対中央アジア政策

拡大キルギスのジェーンベコフ大統領(左)とロシアのプーチン大統領=2019年10月1日、アルメニア・エレバン

 中央アジアはソ連を構成した地域であり、ロシアにとって中央アジアはソ連時代の権益を維持・拡大すべき対象と映る。カザフスタン、キルギス、タジキスタンはロシアが主導する軍事同盟である安全保障条約機構のメンバーである一方、ロシアは同地域を、ユーラシア経済連合を通じて経済的にも支配下に置こうとしている。

 ロシアは欧州連合(EU)に倣って、ユーラシア大陸にわたる統合形態としてユーラシア連合創設をめざしており、2000年10月10日に調印されたユーラシア経済共同体創設条約に基づいて、ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、キルギス、タジキスタンの加盟するユーラシア経済共同体が創設された。同共同体は2001年に実際に設立され、2015年1月のユーラシア経済連合設立に伴って2014年末に発展的に解消される。

 他方で、2007年10月の関税同盟創設条約に署名したロシア、カザフスタン、ベラルーシが母体となって、実際に関税同盟をスタートさせた2010年7月1日以降に、ユーラシア経済連合の実現に向けた動きが加速したのである。といっても、ユーラシア経済連合に加盟している中央アジアの国はカザフスタンとキルギスにすぎない。

 近年、プーチン大統領は「ボリショイ・ユーラシア・パートナーシップ」という新しい概念を提唱するようになった。

 これは、中国による「シルクロード経済ベルト」(Silk Road Economic Belt, SREB)や「一帯一路イニシアチブ」(“Belt and Road” initiative, BRI)の構想で利害対立が生じている中央アジア圏での利害調整のために、ユーラシア経済連合、EU、東南アジア諸国連合(ASEAN)、上海協力機構(SCO)などの大きな枠組みでの協力関係の構築をめざしている(詳しくは拙稿「中ロ協力の現状と問題点」『ロシアNIS調査月報』[2017年11月号]を参照)。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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