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大統領選が物語る本当に分断化されてしまった米国の現実

インタビューシリーズ・トランプ時代の日米② 古矢旬・北海道大名誉教授に聞く

三浦俊章 朝日新聞編集委員

 アメリカ大統領選の民主党候補選びが混迷している。候補が乱立する中、左派のバーニー・サンダース上院議員の勢いが注目されている。サンダース氏は「民主社会主義者」を自称し、富裕層や大企業への増税、最低賃金の引き上げや国民皆保険制度、高等教育の無償化などを唱えている。野党・民主党のなかでも急進派として知られるが、ニューハンプシャー州の予備選に続いて2月22日のネバダ州党員集会でも連勝、最有力候補に躍り出た。

 11月の本選挙は、このままサンダース氏とトランプ大統領との「保守対リベラル」の両極端による一騎打ちになるのか。それとも、ようやくサウスカロライナ州(2月29日)で初勝利したジョー・バイデン前副大統領が巻き返すのか。歴史の文脈のなかでアメリカ政治を分析してきた古矢旬・北海道大名誉教授に、今年の大統領選を読み解いてもらった。(聞き手 朝日新聞編集委員・三浦俊章)

拡大古矢旬・北海道大名誉教授=山本和生撮す

古矢旬(ふるや・じゅん)さん 北海道大学名誉教授
1947生まれ。米プリンストン大博士。北海道大、東京大、北海商科大の教授を歴任。アメリカ政治外交史専攻。著書に『アメリカニズム-「普遍国家」のナショナリズム』『アメリカ 過去と現在の間』『アメリカ政治外交史 第二版』(共著)など。

バイデン苦戦、サンダース躍進の原因は

――予備選が始まるまでは最有力視されていた中道派のジョー・バイデン前副大統領が、予想以上に苦戦しています。支持層である黒人有権者の多いサウスカロライナでは勝ちましたが、序盤戦はアイオワで4位、ニューハンプシャーで5位でした。

 バイデン氏はオバマ路線の継承者をうたっているが、オバマ政権の8年間に進んだ保守とリベラルの分断を克服するビジョンを提示できていない。オバマ大統領は2008年の選挙で「チェンジ」を訴えて当選したものの、結局、現実の経済格差を埋めることはできなかった。むしろオバマ政権下では、草の根保守の「茶会」が、アイデンティティー・ポリティックスの立場から大統領を激しく攻撃しため、本来は経済政策の課題である格差問題が、黒人の人種問題にすり替えられてしまった。そして、白人のアイデンティティー・ポリティックスに訴えたトランプ大統領が誕生したのです。

 バイデン氏は、中道の再興を唱えていますが、険しい道のりです。サウスカロライナ州では相当周到に準備した結果が出ました。引き続きマイノリティーの得票をどの程度取れるかにかかっています。

拡大サウスカロライナ州予備選で初勝利をあげ、支持者の前で喜びの表情を見せるバイデン前副大統領(中央)=2020年2月29日、米サウスカロライナ州コロンビア、香取啓介撮影

――では、サンダースのブームは何が原因ですか。

 サンダース氏を支えているのは、圧倒的に若者たちだ。大学に行こうにも、授業料は高いし、奨学金は少ない。重たいローンを背負わざるをえない。若い人たちに、それだけしわ寄せが行く社会構造になっている。

 レーガン以後の民主党政権は、ビル・クリントン大統領もオバマ大統領も、グローバリゼーションの負の側面への対策が不十分だった。クリントン大統領は福祉予算を削減し、新自由主義的な規制緩和を進めた。ハイテク化が生み出した失業者への再教育も、所得の再配分も不十分だった。オバマ大統領も、中間層に減税しようとしたが、結局は破綻した金融機関を救済して経済を回復させる手法を取った。

 2人の大統領とも、財政や金融政策はウォール街の人材に頼ったのです。その結果、富裕層や大企業が潤った。共和党政権と違いのない民主党政権に対する失望と怒りを、サンダース氏がすくいとっている。ただし、序盤の2州はいずれも白人が多数の州でした。サンダース氏の弱みはマイノリティーです。

拡大若者の圧倒的支持を受けているサンダース氏=2020年2月3日、党員集会で勝利したアイオワ州デモインで、ランハム裕子撮す

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筆者

三浦俊章

三浦俊章(みうら・としあき) 朝日新聞編集委員

朝日新聞ワシントン特派員、テレビ朝日系列「報道ステーション」コメンテーター、日曜版GLOBE編集長などを経て、2014年から現職。

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