市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員
1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。
DJ古家正亨が語るウラオモテ(下)
――新たな動きですか? かつての韓流と違う大きな波ということですか?
「そうです。まずは映画からなんですが、これまで日本で公開された韓国映画の興行成績をみると、上位10作品のほとんどが2000年代前半の公開作品で占められていて、30億円の興収を記録した『私の頭の中の消しゴム』が今年2020年まで不動の1位を守っていました。業界内でも、今後この30億円を超えるような作品はないだろうと言われていたんです。
その理由として上位10作品は、いずれも『冬ソナ』ブーム前後に公開された、いわゆる韓流ドラマ的なわかりやすい作品が多く、当時は時代背景もあり、多くの韓流ファンがドラマの延長上として映画を楽しんだ結果、ドラマファンを巻き込み、10億円以上の興収を記録するヒットを量産できたと言われてきました。
ところが現在もヒット中の『パラサイト‐半地下の家族』が、37億円(2020年3月3日現在)を超え、15年間塗り替えられることのなかった興行収入1位の座に輝いたことは、画期的という言葉以外、思いつきません。しかも、まったく韓流ドラマ的要素のない作品にもかかわらずです。
もちろん、米アカデミー賞受賞効果もあったとは思いますが、これまで15年間、世界の映画祭で絶賛された韓国映画は数多くあれど、ここまでのヒットは1作品もありませんでしたから、それだけが理由ではないはずです。見る人が見れば、これほど韓国映画らしい韓国映画が評価されるようになったことを感慨深く思う人も少なくないはずです。
僕はこのヒットに関して、韓流ファンではなく、普通の映画ファンが『パラサイト』という作品を観に来たから生まれた結果ではないかと思っています。なので、逆に言えば、今後もそういった韓国映画というカテゴリーではなく、一作品としてその評価、興味が独り歩きし始めたとき、『パラサイト』の記録を塗り替える作品が出てくると思います」
――映画以外のドラマも、日本に伝わる手段がずいぶん変化しました。
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