西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
真偽ないまぜの情報がもたらす人々の不安に基づく「静かなパニック」にどう向き合うか
2月末、都内某所のドラッグストア前。開店時間より遥かに早い、早朝からマスクを求める人たちの長い行列ができている。取り乱すこともなく、静かに秩序立った様子で、しかし長蛇の列をなしている。
一見、有事における好ましい国民のあり方のようでもある。確かに東日本大震災ののち、被災地のあちこちで見られたこうした姿は概ね肯定的に報じられた。だが、目に見えない、新型コロナウイルスの感染拡大は、震災とはまた異なった負荷を国民と社会に課しているようだ。
マスクは他者への感染防止にこそすれ、自身の感染防止にはあまり効果が認められないとされている。にもかかわらず、早朝からマスクを求める人たちは、新型コロナウイルスにえも言われぬ恐怖や不安を感じているのだろう。
しかし考えてみれば、本来、他者との接触がウイルス感染の契機となるわけで、長時間見知らぬ他者と近い距離で過ごすことになる行列にならぶことが、かえって他者との接触機会や時間を増やし、感染のリスクを増しているともいえまいか。
そして、こうした行列は、その薬局に限らず、筆者が見た限りでも、他の幾つかのドラッグストアでも同様に生じていた。
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