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新型コロナウイルス感染で世界に広がった「インフォデミック」

真偽ないまぜの情報がもたらす人々の不安に基づく「静かなパニック」にどう向き合うか

西田 亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

目に付く買い占め、ネットでの転売

 ネットや報道ではいま、さまざまな生活用品を求める人々のニュースが溢れている。国内生産が9割を超え、サプライチェーンに中国が含まれていないため、供給体制にも供給量にも問題ないとされるティッシュペーパーやトイレットペーパー、オムツ類、さらに消毒に関連するアルコール除菌剤やウェットティッシュまで、実に多くの商品が、少なくとも店頭レベルでは相当に逼迫(ひっぱく)しているようだ。

 東日本大震災時よりも“悪質”なのは、個人も含め、買い占めや転売行為が目に付く点だろう。

 3月冒頭の時点でAmazonのページを見てみると、マスク60枚、12000円、除菌・消臭スプレー4300円などといった、あ然とする値段の出品もあった。他のオークションサイトなどでも同じような状況のようだ。こうした状況を見ると、我々の社会は、たしかに外見上は平静を装っているものの、二転三転する政府の動向や施策を含め、実際には相当程度混乱した状況にあり、それは「静かなパニック」とでも呼ぶべき状態なのではないか。

拡大高額でマスクが出品される例が相次ぐAmazon=4日のAmazonのサイトから

「静かなパニック」の背景にメディア環境の発達

 「静かなパニック」は、なにも人々が愚かだから生じているわけでもなく、むしろ発達した現在のメディア環境を背景に生じているように思われるだけに、いっそうタチが悪い。

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筆者

西田 亮介

西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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