関山健(せきやま・たかし) 京都大学 大学院総合生存学館准教授
財務省、外務省で政策実務を経験した後、日本、米国、中国の大学院で学び、公益財団等の勤務を経て、2019年4月より現職。博士(国際協力学)、 博士(国際政治学)。主な研究分野は国際政治経済学、国際環境政治学。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
国際安全保障の大問題である感染症。新型コロナ感染を契機に日本がとるべき対策とは
さらに、感染症による社会不安、経済混乱、資源不足、人の移動が、治安の悪化、暴力事件や暴動の発生、果ては紛争の勃発につながることも考えられる。
今回の感染拡大にあたっては、幸い今のところ大規模な暴動や紛争こそ発生してはいない。しかし、新型コロナウイルス関連の暴力事件は散発している。ニューヨークの地下鉄駅構内で、黒人男性がマスク姿のアジア系女性に「病気の女め!」などの暴言を吐きながら殴りかかった事件、横浜市のドラッグストアで品薄のマスクをめぐって客同士が殴り合いの喧嘩(けんか)をした事件、中東パレスチナで日本人女性が「コロナ」と揶揄(やゆ)され暴行を受けた事件などが発生している。
国民の生命財産と経済社会の安定を守ることが政府の安全保障上の責務ならば、感染症発生の予防、早期発見、感染症が広がった場合を想定した迅速な対応とそれへの準備が、各国政府には求められる。
感染症が怖いのは、人が引いた国境線にお構いなく、国際的に広がる点である。