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トランプに投票しなかった共和党の外交安保専門家たち

第1部「権力の掌握―ヘドロをかき出せ」(1)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

公開書簡の仕掛け人

 米紙ニューヨーク・タイムズで発表された二通目の公開書簡の仕掛け人であり、文章を起草したのが、G・W・ブッシュ政権でNSC法律顧問を務めたジョン・べリンジャー氏だ。ワシントン政界では共和党のみならず、民主党からも優秀な法律家として敬意を集めている人物である。

 ベリンジャー氏によれば、トランプ氏が共和党候補者指名争いで首位を走り続けていた2016年春、共和党政権で外交安保関連の要職に就いた経験のある元当局者たちは懸念を募らせていたという(ジョン・ベリンジャー氏へのインタビュー取材。2020年1月27日)。トランプ氏の訴えは、共和党政権が長年重視してきた自由貿易、民主主義、同盟国といった価値観とは矛盾するものだったからだ。

 そんな思いを抱いていたベリンジャー氏のもとに、一通目となる公開書簡への署名協力が送られてきたが、「忠実な共和党員」という一文があったため、署名を見送った。

 「すでにその時点で、私は自分を『共和党員』と言うことがもはや難しくなっていたと感じていた。共和党は我々がかつて守ってきた価値観をすでに守っておらず、私は共和党がどこへ向かうのか懸念していたからだ」

 ただ、ベリンジャー氏自身も一人で懸念しているだけではなく、何かしらまとまったグループとして行動を起こさなければいけないと考えていた。

拡大ワシントンの法律事務所でインタビューに答えるジョン・べリンジャー元NSC法律顧問、ランハム裕子撮影

 2016年夏、ブッシュ政権の元政府高官数人に声をかけ、「我々は個々人ではなく、集団で何らかの意見表明をする必要がある」と伝え、「もし私が皆の抱える懸念を書簡としてまとめれば、署名してくれるか」と尋ねると、すぐに数人から「署名する」という返事があったという。

 ベリンジャー氏によれば、この二通目の公開書簡が一通目と異なるのは、署名者を閣僚や政権幹部としてホワイトハウスで大統領と直接一緒に働いた経験がある人物に限ったという点にあるという。

 ベリンジャーは「我々は大統領がどのような資質が求められるかも知っている。我々は大統領のすぐそばで働き、大統領の抱えるストレスも見てきた」と語る。ベリンジャー氏自身、2001年に起きた米同時多発テロ(9.11)が発生した際もホワイトハウスにおり、その直後の混乱状況の中でG・W・ブッシュ大統領と一緒に働き、その時の状況を克明に覚えている。

 「私はブッシュ大統領がその時、どのようなストレスにさらされたかを知っているし、より良き大統領になるためには何が必要なのかも知っている」と語り、こう強調した。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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