メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

トランプ、ツイッター更迭劇の狂乱

第1部「権力の掌握―ヘドロをかき出せ」(2)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

相次ぐ閣僚更迭

 トランプ氏は2017年11月の大統領選で当選すると、ホワイトハウスの要職である大統領首席補佐官にラインス・プリーバス氏(共和党全国委員長)、大統領首席戦略官にスティーブン・バノン氏(選挙対策最高責任者、右派系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」元会長)、大統領報道官にショーン・スパイサー氏(共和党全国委員会広報担当)、大統領補佐官(国家安全保障担当)にH・R・マクマスター氏(陸軍中将)(※初代大統領補佐官のマイケル・フリン元国防情報局長は「ロシア疑惑」への関与で17年2月に更迭)、国務長官にレックス・ティラーソン氏(米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者)、国防長官にジェームズ・マティス氏(元海兵隊大将)という陣容を整えた。

 ワシントン政界ではエスタブリッシュメント批判を展開してきたバノン氏が新設された大統領首席戦略官という政権中枢のポストに就くことに強い警戒感があった。しかし、首席補佐官に就任したプリーバス氏は共和党主流派との太いパイプをもつことから政権と党の橋渡し役が期待された。

 国務長官のティラーソン氏は外交・行政経験はないものの経済界で成功を収めた大物経済人で、国防長官のマティス氏も「戦う修道士」「狂犬」という異名をもち米軍内で尊敬を集める軍高官。大統領補佐官のマクマスター氏もベトナム戦争の失敗を検証した著書もある戦略家として知られており、これらの人々は政界関係者から一目置かれる人材であった。

拡大シンクタンクで講演するティラーソン国務長官=2017年12月12日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 しかし、トランプ氏は自身が指名した政権幹部との間でも次第に対立を深めることになる。例えば、ティラーソン氏は各国との協力を重視する国際協調派だったため、イラン核合意やパリ協定からの離脱など国際社会にける合意をほごにし続けるトランプ氏と確執を深めていった。

 ホワイトハウスと国務省の関係は険悪化の一途をたどり、国務省の外交官たちを取り巻く環境も悪化する。2017年当時、北朝鮮政策特別代表を務めていたジョセフ・ユン氏によれば、北朝鮮問題をめぐってもティラーソン氏は対話による解決を図ろうとする一方、ホワイトハウスは軍事的選択肢も含めて強硬姿勢を取り、「(両者は)激しく衝突していた」と回顧する。

 ユン氏は2018年2月に「個人的な理由」で辞任したが、その理由について「我々国務省の意見は(ホワイトハウスに)聞いてもらえなかった。私はこれ以上(仕事を続けることは)無理だと思った」と語り、自身の辞任の背景にはホワイトハウスと国務省の対立があったことを明らかにした(ジョセフ・ユン氏へのインタビュー取材。2018年8月29日)。

拡大インタビューを応じるジョセフ・ユン前北朝鮮政策特別代表=2018年8月29日、ワシントン、ランハム裕子撮影

 ユン氏の辞任から約2週間後の3月13日、トランプ氏は自身のツイッターで突如、ティラーソン氏を解任し、後任にCIA長官のポンペオ氏を充てる人事を発表した。

 トランプ氏による政権幹部の更迭はティラーソン氏にとどまらない。前述の主要な役職だけをみても次のようなめまぐるしい人事が行われることになる(代行を含む)。

大統領首席補佐官 ラインス・プリーバス氏(17年7月、解任)→ジョン・ケリー氏(19年1月、解任)→ミック・マルバニー氏(20年3月、解任)→マーク・メドウズ氏(同、就任)
大統領首席戦略官 スティーブン・バノン氏(17年8月、解任)。その後空席
大統領報道官 ショーン・スパイサー氏(17年7月、解任)→サラ・サンダース氏(19年7月、退任)→ステファニー・グリシャム氏(同、就任)
大統領補佐官(国家安全保障担当) マイケル・フリン氏(17年2月、解任)→H・R・マクマスター氏(18年4月、解任)→ジョン・ボルトン氏(19年9月、解任)→ロバート・オブライエン氏(同、就任)
国務長官 レックス・ティラーソン氏(18年3月、解任)→マイク・ポンペオ氏(同年4月、就任)
国防長官 ジェームズ・マティス氏(19年1月、解任)→パトリック・シャナハン氏(同年6月、辞任)→マーク・エスパー氏(同年7月、就任)

 トランプ氏が更迭劇で用いる手法の最大の特徴は、突然のツイッター辞令にある。

・・・ログインして読む
(残り:約3002文字/本文:約6987文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

園田耕司の記事

もっと見る