メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

新型コロナ:日本型意思決定システムが働かない時

日本が弱い「もう一つの」意思決定システム

花田吉隆 元防衛大学校教授

法律に縛られる官僚主導の意思決定

 では、伝統的な日本型意思決定システムとは何か。通常、意思決定のおぜん立ては官僚がし、官僚が作った案を政治が最終決定する。つまり、官僚主導の意思決定システムだ。これには功罪両面あるが、良くも悪くもこれが日本という国家を象徴的に表している。

 行政は「法律による行政の原理」が基本だ。全ての行政活動は法律の根拠なしにはできない。これが国民主権を制度的に保証する。法律は国会が決め、行政はそれを根拠とし、その範囲内でのみ活動できる、とすることにより、行政を国民主権の下にコントロールする。

 つまり、官僚主導の意思決定は、第一に「法律で縛られた範囲内でのみ」行われる。この意味で、決定に柔軟性を期待することはそもそもできない。「硬直的」であることこそが、官僚主導の意思決定の特徴だ。「柔軟」とは、官僚が勝手に判断することだ。それは、国民主権から好ましくないから法律で縛ることにした。だから判断が「硬直的」になるのはやむを得ない。

「前」「横」「外」の綿密のすり合わせ

 第二に、官僚の意思決定には、「前」「横」「外」との綿密なすり合わせがある。

 「前」とは、前例だ。決定が前例にのっとったものであれば、それを決めるのは楽だ。「前に一度判断してある。今回はそれを繰り返すだけだ」となれば、判断は省略可能だ。逆に、前例を踏襲しない場合は大変だ。あらゆる証拠を整え理論武装して論戦を戦い抜いていかなければならない。その結果、勢い、前例から外れることは嫌われる。前例踏襲とは、仮に外的条件が変化してもその変化に対応しないということだ。その結果、決定は往々にして適当性を欠くきらいがある。変化に機敏に対応できない。少なくとも変化を先取りし、先手を打って先回りするなどというのは不得手だ。

 「横」とは、関係方面を指す。関係省庁、特に、予算の裏付けが必要なものは財務省、人の手当てが必要なものは総務省、その他、関係する省庁との間の了承の取り付けが必要だ。この意見調整は大変な難事で、時間はとられるし労力は並大抵でない。しかも、調整は官僚組織内部だけに止まらない。関係諸団体、すなわち、経済界、事業団体、関連企業や地方公共団体等との調整もいる。無論、これらの調整の前には、自分の役所内部の関係部局、組織上部の了解もとらなければならない。

 「外」は諸外国だ。日本の場合、米国と事前にすり合わせなければならない事項は多いし、その他、関係する諸外国との調整もいる。

 「前」、「横」「外」と綿密な調整を経て決定がなされれば、出来上がった決定はコンセンサスに裏付けされる。だから、今回のように、発表後、各方面の異論にさらされることはない。しかし

・・・ログインして読む
(残り:約1905文字/本文:約3872文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

花田吉隆の記事

もっと見る