患者のニーズに消極的な日本医師会
2020年03月08日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は日本のさまざまな問題点を浮き彫りにしている。その一つがオンライン診療の決定的な遅れである。
その遅れは中国と比べればすぐに理解できる。2020年2月6日付のチャイナデイリーによれば、アプリケーションデータの追跡をするAnalysys Qianfanは、春節の間のオンライン診療(医師と患者との間でパソコンやスマートフォンなどによる情報交換を通じて行う医療行為)の一日あたりの利用者がピーク時で671万人に達したと伝えている。このなかには、武漢の人々向けに無料のオンライン診療サービスを提供した例も含まれている。
具体的には、テンセントが投資するインターネット医療会社、WeDoctor(微医)やHaodf.com(好大夫在线)などである。2月5日の昼までに、WeDoctorは無料診療プラットフォームに累積で8689万人もの閲覧者をもち、1万8776人の医師が98万6100人に診療アービスを提供したという。
すでにこのサイトでは、「監視社会・中国と新型コロナウイルス対策」において、ある意味で「進んだ」中国の対策を紹介した。
逆に、日本は中国にまったく遅れている。2月27日付の毎日新聞朝刊の「みんなの広場」では、栗林智枝子医師が「私が今、厚生労働省に進めてほしいのは「オンライン医療」の推進です」と書いている。事実上、「オンライン診療自体はまだ始まっていません」というお粗末な状況にあるのだ。3月3日には、経済同友会の桜田謙悟代表幹事が記者会見で、オンラインによる診療などのIT(情報技術)化を「財政出動で積極的に促すべきだ」と指摘している。
逆に言えば、日本政府はオンライン診療にまったく後ろ向きであった。2018年3月、厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表し、2019年7月にその一部を改訂した。2018年度の診療報酬改定で、医療機関が通院患者にオンライン診療をした場合の保険点数が設定された。しかし、対象患者が制限されたうえに、6カ月間の対面診療をした後でなければオンライン診療を開始できなかった。つまりオンライン診療は事実上、行われていないとみなしていい。2020年4月に若干の条件緩和があるが、オンライン診療を広げようとする意欲がまったく感じられない。
2月28日、厚生労働省はCOVID-19の拡大を防止するため、慢性疾患をもつ提起受診者の感染機会を減らす目的で、電話や情報通信機器を用いた再診による処方を認める事務連絡を出した。わずかな一歩だが、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください