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新型コロナ対策 オンライン診療を推進せよ

患者のニーズに消極的な日本医師会

塩原俊彦 高知大学准教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は日本のさまざまな問題点を浮き彫りにしている。その一つがオンライン診療の決定的な遅れである。

 その遅れは中国と比べればすぐに理解できる。2020年2月6日付のチャイナデイリーによれば、アプリケーションデータの追跡をするAnalysys Qianfanは、春節の間のオンライン診療(医師と患者との間でパソコンやスマートフォンなどによる情報交換を通じて行う医療行為)の一日あたりの利用者がピーク時で671万人に達したと伝えている。このなかには、武漢の人々向けに無料のオンライン診療サービスを提供した例も含まれている。

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 具体的には、テンセントが投資するインターネット医療会社、WeDoctor(微医)やHaodf.com(好大夫在线)などである。2月5日の昼までに、WeDoctorは無料診療プラットフォームに累積で8689万人もの閲覧者をもち、1万8776人の医師が98万6100人に診療アービスを提供したという。

拡大オンラインでの診療の中国での市場規模(単位は10億元)
 2020年3月7日付のエコノミスト電子版が伝えたところでは、図に示したように、オンラインでの診療に医薬品販売などを加えた市場規模は2020年に2000億元近くになる。これはドル換算で約290億ドル、日本円にして3兆円を超える。この数値は、COVID-19流行前の1580億元の予測が急遽引き上げられたもので、いかにCOVID-19流行下でオンライン診療が有効な手段として活用されつつあるかを物語っている。

遅れる日本のオンライン診療

 すでにこのサイトでは、「監視社会・中国と新型コロナウイルス対策」において、ある意味で「進んだ」中国の対策を紹介した。

 逆に、日本は中国にまったく遅れている。2月27日付の毎日新聞朝刊の「みんなの広場」では、栗林智枝子医師が「私が今、厚生労働省に進めてほしいのは「オンライン医療」の推進です」と書いている。事実上、「オンライン診療自体はまだ始まっていません」というお粗末な状況にあるのだ。3月3日には、経済同友会の桜田謙悟代表幹事が記者会見で、オンラインによる診療などのIT(情報技術)化を「財政出動で積極的に促すべきだ」と指摘している。

 逆に言えば、日本政府はオンライン診療にまったく後ろ向きであった。2018年3月、厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表し、2019年7月にその一部を改訂した。2018年度の診療報酬改定で、医療機関が通院患者にオンライン診療をした場合の保険点数が設定された。しかし、対象患者が制限されたうえに、6カ月間の対面診療をした後でなければオンライン診療を開始できなかった。つまりオンライン診療は事実上、行われていないとみなしていい。2020年4月に若干の条件緩和があるが、オンライン診療を広げようとする意欲がまったく感じられない。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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