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新型コロナ対応で緊急事態宣言はデメリットだらけ

「異次元の不況」を招く愚策は避けよ。必要なのは「平常対応」できる体制の構築だ

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

私権の制限、過度の国家統制に危惧

 とはいえ、その必要性はさておいて、「(改正)新型インフルエンザ特別措置法」(特措法)を適用すればどうなるか考えてみましょう。具体的には、特措法によって、

新型インフルエンザ特別措置法
第32条
第1項 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
第1号 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
第2号 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域
第3号 新型インフルエンザ等緊急事態の概要

第2項 前項第一号に掲げる期間は、2年を超えてはならない。

第3項 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延の状況並びに国民生活及び国民経済の状況を勘案して第1項第1号に掲げる期間を延長し、又は同項第2号に掲げる区域を変更することが必要であると認めるときは、当該期間を延長する旨又は当該区域を変更する旨の公示をし、及びこれを国会に報告するものとする。

第4項 前項の規定により延長する期間は、1年を超えてはならない。

第5項 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等緊急事態宣言をした後、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、速やかに、新型インフルエンザ等緊急事態解除宣言をし、及び国会に報告するものとする。

第6項 政府対策本部長は、第1項又は第3項の公示をしたときは、基本的対処方針を変更し、第18条第2項第3号に掲げる事項として当該公示の後に必要とされる新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に関する重要な事項を定めなければならない。

で定める「緊急事態宣言」が可能となります。この宣言がなされると、国は「緊急事態」にあるものとして、以下の緊急措置が可能となります。

第45条 多人数向け施設の使用制限、イベントの開催制限
第46条 住民に対する予防接種の実施
第47条 医療、衣料品の確保
第48条 臨時医療施設の設置
第49条 臨時医療施設の為の土地の使用
第50条 物資及び資材の供給の要請
第51条 備蓄物資等の供給に関する相互協力
第52条 電気及びガス並びに水の安定的な供給
第53条 運送、通信及び郵便等の確保
第54条 緊急物資の運送
第55条 物資の売渡の要請
第56条 埋葬及び火葬の特例
第57条 私権の保全
第58条 金銭債務の支払猶予
第59条 生活関連物資等の価格の安定
第60条 融資

 これを見て分かるとおり、「緊急事態宣言」によって可能となる緊急措置の内容は極めて広範でかつ私権の制限を含み、なにより国家統制経済の色合いの強いものです。そういった「私権制限・国家統制の行き過ぎや国家権力の濫用」を制限する方向の改正であれば、当然議論がなされてよいものと思います。

 しかしながら、現在報道されているところや政府のSNS上での発信によれば、政府・自民党が示しているのはそういった方向の改正では全くなく、むしろ、幅広く「緊急事態宣言」を出すことを可能とし、国の裁量を強化することだとされており、政府・自民党の「改正特措法」が成立すれば(成立するでしょう)、「私権制限・国家統制の行き過ぎや国家権力の濫用」がなされることが強く危惧されます。

拡大新型コロナウイルスへの対応について記者会見する安倍晋三首相=2020年2月29日、首相官邸

新型コロナウイルス感染の現況

 このように、「改正」の動機にも中身にも問題が多い「新型インフルエンザ特措法改正」ですが、それ以上に大きな問題は、

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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