宇野重規(うの・しげき) 東京大学社会科学研究所教授
1967年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。同大学社会科学研究所准教授を経て2011年から現職。専攻は政治思想史、政治学史。著書に『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社学術文庫)、『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)、『保守主義とは何か』(中公新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
古代ローマの「独裁官」制度から考えた今の日本の緊急事態に必要なこと
新型コロナウィルスの拡大がとどまるところを知らない。日本でも政府による小中高の「一斉休校」、入国制限の強化などの決定が続いている。ウィルスのさらなる感染拡大を防ぐため、今週にも「緊急事態宣言」を可能にする法案が成立する見込みである。このような事態をどのように捉えるべきか、不安に思う人も少なくないはずだ。
小中高の一斉休校の要請については、はたして内閣にそのような法的権限があるのかが問題となった。その意味で、学校の停止はもちろん、イベントの開催制限、土地・建物の強制使用、医療品の収用などを行うにあたって、「緊急事態宣言」を出せればその法的根拠となる。この法案に対し野党にも協力の動きも見られるが、私権を大きく制限することが可能なだけに慎重な判断が求められるだろう。
問題は危機対応と民主主義との関係にある。平時ならいざ知らず、緊急事態にあたっては、ある程度、トップダウンの決定も必要ではないか。そのために民主主義が一時的に制限されるとしても、やむをえないのではないか。そのような議論もありうるだろう。しかし、ここはさらなる検討が必要である。
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