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コロナ禍は安倍内閣の人災だ~「春節訪日熱烈歓迎」動画の舞台裏

中国国民訪日を熱烈歓迎、海に浮かぶ培養皿…。素人でもわかる過ちをなぜ繰り返すのか

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

中国国民の訪日を熱烈歓迎した安倍首相の春節動画

 「「コロナ」の発生源、中国から人間を大量に入れたのも、検査の数を少なくし感染者数を少なめに抑えようとしたのも、すべてその使命感と情熱のなせる業だった」かどうかは知る由もないが、ここで日本へのコロナ禍襲来初期のころのことを改めて記録しておくことは重要なことだと思われる。

 昨年12月31日の大晦日、中国当局はWHO(世界保健機関)に原因不明の肺炎が発生したと報告して、翌1月1日に武漢市の海鮮市場を閉鎖。同5日には、武漢市衛生健康委員会が肺炎により7人が死亡したと発表した。同9日、新型肺炎による初の死亡者が中国で確認された。

 1月16日には日本の神奈川県内で、同19日には韓国で最初の感染症例を確認。このあたりから、新型コロナウイルス禍のニュースが世界中で飛び回り始める。

 1月22日、WHOが緊急会議。台湾が台湾と武漢間の団体旅行を一時停止、米国は武漢からの渡航者の入国を国内5空港に制限。北朝鮮は中国からの観光客の受け入れを全面停止した。この日、中国国内の感染者440人、死亡者9人。

 1月23日、武漢市が閉鎖され、市内の空港、鉄道、フェリーなど交通機関の運行がすべて停止された。中国国内の感染者571人、死亡者17人。

 1月24日、台湾、中国大陸全土への団体旅行を全面中止。フィリピン、武漢からの観光客500人を強制送還。日本は、武漢を含む中国湖北省への渡航を中止勧告。中国国内の感染者830人、死亡者25人。

 ご覧の通り、1月下旬、中国を中心にコロナウイルス危機が東アジアに急速に拡大していった。日本のニュース番組、ワイドショーなどでこのニュース、特集が集中的に組まれ、各家庭でもこの話題で持ちきりとなっただろう。

 ところが、日本政府はこの段階で、「まさに事実は小説より奇なり」という言葉を地で行くことをやってのけた。しかも、日本の首相である安倍晋三自らが率先垂範して「奇」なる行動に出たのだ。

 台湾が中国大陸全土への団体旅行を全面中止する措置を講じ、フィリピン政府が武漢からの観光客500人を強制送還した1月24日、安倍は北京の日本大使館のHPに自ら登場、中国国民に向けて春節(旧正月)をお祝いし、訪日を熱烈歓迎する動画を公開した。

 漫画のような失策ではあるが、その結果を考えると決して笑って済ませられる問題ではない。この問題は国会でも取り上げられ、批判、疑問の声がネット上などで広がったため1月30日には動画は削除されたが、中国発のコロナウイルス禍が世界中で恐れられている1週間、中国へのメッセージとして掲げられ続けた。その祝辞の要点を記録しておく。

 日本で活躍されている華僑・華人の皆様、謹んで2020年の春節の御挨拶を申し上げます。今春、桜の咲く頃に、習近平国家主席が国賓として訪日される予定です。(略)習主席の訪日を、日中両国がその責任を果たしていくとの意思を明確に示す機会にしたいと思います。
 本年夏には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。(略)春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしています。その際、ぜひ東京以外の場所にも足を運び、その土地ならではの日本らしさを感じて頂ければ幸いです。(後略)

 ウイルスなどが席捲していない通常の時であれば常識的な挨拶文として人目をひかなかっただろうが、ウイルスの恐怖にすくみ上がっていた中国では、脱出先として熱い視線で注視されたにちがいない。メッセージを出した3日後の1月27日には、感染者は24日の3倍以上の2744人、死亡者は80人に達していた。

 日本の首相自らが熱く歓迎の言葉を発している。滑舌も悪く、この時節に何を考えているのかはよくわからないが、弟分とみなしていた北朝鮮が早々に受け入れを全面停止した状況下にあって、珍しくも奇特な脱出口に見えたことだろう。

拡大中国の習近平国家主席(右)の出迎えを受ける安倍晋三首相=2019年12月23日、北京の人民大会堂

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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