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新型コロナ対応で自治体に格差。問われる首長のリーダーシップ

ウイルスの全国的感染で明らかになった首長・自治体の危機管理・情報発信能力の差

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

臨時会見で新型コロナウイルスの発症人数について説明する鈴木直道知事=2020年3月9日、北海道庁

 新型コロナウイルスの感染が全国的に広がっています。新たな感染を発表する自治体による記者発表も日常的に行われるようになり、今のご時世、多くの自治体の会見がインターネットを通じてライブ配信されることから、その自治体の市民のみならず、多くの国民が自治体の発表する情報に注目をしています。

 新型コロナウイルス感染症に関する記者会見やメディア発表に関しては、地方自治体が発表した後、厚生労働省によって集計された結果が報告されるのが今の流れですが、子細に見ると、記者会見や発表のあり方に結構な差異が生じており、情報公開に対する自治体の姿勢や、ひいては自治体のトップである首長のリーダーシップが問われる事態にもなっています。

 私は先日、厚生労働省や各自治体の新型コロナウイルス感染者の発生についてのステートメントをもとに、現状を視覚化(ビジュアライズ)したサイト「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」を公開、新型コロナに関する記者会見やメディア発表の情報を日々集めていますが、そのなかで痛感した自治体ごとの情報公開のあり方について、論じたいと思います。

横一線で比較される自治体の危機管理能力

 大阪府は新型コロナウイルス感染症に関し、情報公開に最も積極的な自治体のひとつだとされています。特徴的なのは、府内43市町村の疫学的な対応のすべてを府が一元的に管理、発表も府が行っていること。大規模な感染症への対応を市区町村ごとに行うと、府と市区町村、また市区町村同士の情報連携などに時間がかかり、スピーディーな意思決定ができないからという理由が背景にはあるのでしょう。

 一方、都道府県・政令市間や保健所、厚生労働省と地方自治体との情報連携がうまくいっていないケースも多々見けられます。例えば、石川県が2月27日に公表した陽性患者のケースでは、厚労省が患者の自宅を滋賀県としたのに対し、滋賀県は、患者は普段は東京在住であり県内の感染者には含まれないとし、解釈が分かれました。その結果、メディアや研究機関による集計にも混乱が生じました。

 新たな患者の発生を報告する会見のかたちも、首長自らが市民への要請や広報を発信するケースから、あくまで保健衛生を所管する部局担当者が事実を述べるだけの会見を行うケースまでまちまちです。メディア用の資料も、表組みに整理された情報を記者会見と同時に公開する自治体から、会見時にメディアに配布した紙をスキャンしただけのものにも関わらず、数日後にホームページにこっそり掲載する自治体まで、それこそさまざまです。

 ふだん、自治体の危機管理能力が、横一線で比べられることはほとんどありません。あるとすれば、大地震など大きな災害の際ですが、それでも一部の地域に限られます。今回は新型コロナウイルス感染症が全国に広がるなか、同種の発表を複数の自治体が行ったため、情報提供のあり方に差異があることが鮮明になりました。

 もっと言えば、政府による小中高校の休校要請に先立ち、自治体として休校を要請する判断をした首長が評価されるなど、首長の危機管理能力や情報発信能力、リーダーシップにも注目が集まっています。文字どおり、「自治体力」が問われる事態になっているのです。

大阪府在住の女性が新型コロナウイルスに感染し、会見する大阪府健康医療部の藤井睦子部長(中央)ら=2020年1月29日、大阪市中央区の大阪府庁

プライバシーと市民の安心・安全

 新型コロナウイルス感染症にかかる情報公開において悩ましいのは、感染者のプライバシーと市民の安心安全のどちらを優先するのか、という点です。感染者のプライバシーを考慮して情報を公開しないという判断がある一方で、市民の安心・安全を重視して最大限の情報を公開するべきだという議論もあります。

 そもそも、感染症に関する報道発表に一律的な基準はあるのでしょうか?

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