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萎縮する共和党~トランプに同調しなければ報復される

第2部「共和党からトランプ党への変貌―支持率9割の熱狂」(2)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

「同調しなければ報復される」

 サンフォード氏は9月13日、ビル・ウェルド氏、同じく共和党の指名を目指していたジョー・ウォルシュ元下院議員の3人の連名で米ワシントン・ポスト紙に「共和党予備選中止は致命的な誤りだ」という意見記事を寄稿し、「共和党は我々の米国の伝統よりも、ロシアや中国にもっと似せた指名手続きをとるような政党に本当になりたいのか?」と訴えた(Sanford, Mark, Walsh, Joe and Weld, Bill. “We are Trump’s Republican challengers. Canceling GOP primaries is a critical mistake.” The Washington Post 13 September 2019.)。

 しかし、サンフォード氏らの訴えは無視され、その後もほかの州で予備選中止の決定は相次いだ。

 サンフォード氏にとってとどめとなったのは、2020年2月に予備選が行われる予定のニューハンプシャー州で地元回りをしていた際、大統領選をめぐる共和党のイベントに出席してあいさつする機会を求めたにもかかわらず、拒否されたことだ。

 サンフォード氏は2019年11月11日、自身のフェイスブックに投稿してこう嘆いた。

 「(トランプ氏と)異なる価値観をもつ人物が地元の小さな集会にいるというだけで、(主催者たちは)だれかを怒らせてしまうと怖がっているのだろうか。これは共和党予備選が中止になっている事態を鏡のように映し出している。共和党は一体どうなってしまったのか」

 サンフォード氏は翌12日、共和党候補者指名争いから正式に撤退することを発表した。

拡大トランプ大統領が弾劾裁判で無罪となった翌日、ホワイトハウスでトランプ氏の登場を待つ閣僚メンバーや共和党議員たち=ワシントン、ランハム裕子撮影、2020年2月6日

 共和党議員や地元の党執行部の関係者が足並みをそろえてトランプ氏を擁護する理由について、米ブルッキングス研究所のマーガレット・テイラー研究員は「同調しなければ、トランプ氏から『報復』を受けると恐れているからだ」と語る(マーガレット・テイラー氏へのインタビュー取材。2019年12月16日)。

 2020年11月の大統領選と同時期に上下院選も行われる。共和党支持者たちの間でカリスマ的な人気を誇るトランプ氏から批判されれば、共和党議員たちはとても選挙を戦うことができなくなる。つまり、トランプ氏に逆らうことは政治的な死を意味するというわけだ。

 トランプ氏の報復には前例がある。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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