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「神」に近づくプーチン 2036年まで大統領を継続へ

憲法さえも自分の好き勝手に変更する傍若無人

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年3月10日、女性初の宇宙旅行経験者、ヴァレンチナ・テレシコワ下院議員はウラジーミル・プーチン大統領の大統領資格要件について、憲法改正案を提案した。憲法改正施行時に大統領職を務めたか、務めている任期とは切り離して大統領任期数を考えることとし、憲法改正施行時に大統領職にあったか、あるいはまた在職中の人物が大統領選に候補者として参加することを妨げないと規定するものだ。

これまでの任期数を「ゼロ化」

拡大Gevorg Ghazaryan / Shutterstock.com

 つまり、新憲法下でこれまでの大統領任期数が「ゼロ化」されることで、プーチンは大統領任期が「2期を超えてはならない」とされる新憲法下でも立候補でき、2024年と2030年の大統領選に勝利すれば最長2036年まで大統領職にとどまることが可能となる。

 このサイトの記事「「プーチン3.0」を展望する」では、つぎのように指摘したことがある。

 「2024年の大統領選は新憲法下で初めて実施されるので、プーチンは大統領になる資格があるとの見方もあるが、こうした事態は起こらないだろう。彼自身も新憲法を機にこれまでの大統領任期を「ゼロ化」して、新憲法下初の大統領として最大もう2期できるようになるとは考えていない。」

 いまとなってみると、この指摘は誤っていたことになる。この予断がはっきりと裏切られたのは、2020年3月6日に、プーチンがつぎのように発言してからであった。

 すなわち、「「国家ソヴィエト」に特別の権限を与えて、そのトップに私がなるという仄めかしがあるが、それはわれわれの国に二頭政治の状況をもたらす。こうした状況はロシアにとってまったく致命的なことだ」とのべたのである。

 それまでは、プーチンは2024年の大統領選には出馬せず、別の方法で権力の座を守ろうとしていると、多くのロシア人は考えていた。その意味では、この日にサプライズが起こり、その延長線上で10日にプーチンの憲法改正の目論見がはじめて明確にされたことになる。

 それは、テレシコワ議員の提案後、1時間半の休憩がとられ、プーチン自身がその提案に賛意をのべるというかたちがとられたことでわかる。与党である「統一ロシア」のテレシコワの提案をあらかじめ承知したうえで、プーチンは登場準備をしていたのである。

 憲法裁判所がゼロ化を認めれば、それに従うとしたプーチンは事実上、2024年の大統領選への自らの出馬を可能とする憲法改正を容認したことになる。その後、憲法改正のために2回目の審議にあたる第二読会の投票が行われ、380人が賛成し、43人が反対、1人が棄権した。翌日の第三読会でも承認された。同法案が上院でも承認されたことから、4月22日に国民投票が実施されることになる。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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