日本の危機管理の甘さを問い直し、阻害要因について国民レベルで議論することが必要だ
2020年03月20日
新型コロナウイルスの感染が世界中に広がっている。収束の兆しは一向に見えていない。日本国内でも感染は拡大の一途で、7月下旬から始まる東京五輪開催も危ぶまれている。歴代最長の安倍晋三政権にこれまでで最も危機的な状況をもたらしている。
安倍政権の対応が後手に回るなか、国内感染者数と死者数は日に日に増え、感染者は920人を越え、死者も32人を数える(2020年3月19日午前時点)。クルーズ船の乗客乗員とチャーター便の帰国者を含めれば、感染者は1636人、死者は39人に及ぶ。クルーズ船の死者7人のうち、5人は70代と80代の日本人の高齢者だ。
「政治は結果がすべて」。安倍首相はこの言葉を好み、国会の内外でこれまでも何度も口にしてきた。今、この言葉が真綿で自らの首を絞めるかのごとく、安倍首相を追い込んでいる。
日本国民の多くは、忙しい毎日をまじめに働いて納税している。その見返りに、国家が本来、真っ先に何よりもやらなければならない役目は、国民の生命と財産を守ることのはずだ。
にもかかわらず、なぜここまで新型コロナの被害は拡大してしまったのか。
安倍政権の新型コロナウイルスへの対応がいかに場当たり的か。日本と異なり初動対応を迅速かつ大胆に実施したモンゴルと台湾を引き合いに、みていきたい。
世界を見渡せば、イタリアやイラン、韓国、日本など、中国と政治的・経済的つながりの強い国々で新型コロナウイルスの感染拡大が目立つ。そんななか、中国と5000キロ近い国境を接するモンゴルでは、3月9日に感染者1人を初めて確認し、これまでに6人のみにとどまる。北から南まで日本列島の長さは約3500キロだから、5000キロ近くも国境を接していて、感染者が6人というのは実に驚異的だ。
モンゴルがコロナウイルス対策として一体何をしてきたのか? 時系列で紹介したい。
中国湖北省武漢市は1月23日、急激な感染拡大を受け、市内全域のバスや地下鉄などの公共交通機関の運行を停止、人口約1100万人の巨大都市を事実上、封鎖した。しかし、1月24日から始まる春節(旧正月)を前に、すでに中国全体の民族大移動が起こっており、感染も広がり始めていた。
モンゴルは早速動いた。1月27日に中国との国境の道路を封鎖し、車や人を通行止めにした。さらに、同日には幼稚園から大学まで全教育機関を休校にしたほか、多数の人が集まる芸術・文化・スポーツイベントや会議の開催を禁止した。
日本が中国・韓国からの入国制限の強化を始めたのは3月9日。そして、安倍首相が小中高校の休校を要請したのは2月27日で、大規模なスポーツ・文化イベントを中止もしくは延期、または規模を縮小するよう要請したのは2月26日だ。モンゴルに比べ、何もかも1カ月以上遅い。
くわえて、モンゴルは2月1日の時点で、モンゴル国民の中国・香港への渡航を禁止したほか、中国人と中国に滞在経歴がある外国人の入国を全面禁止にした。そして、2月末には、なんと中国訪問後のモンゴルのバトトルガ大統領と外相、その他の政府高官らを、「予防的措置」として14日間の隔離下に置いた。
モンゴルは中国と経済的な結びつきが強く、友好関係にある。しかし、水際対策で中国に遠慮しがちがった日本と違い、何よりも自国の防疫を最優先し、大胆な措置に打って出たのだった。
台湾の対応はどうだったのか?
台湾は中国本土との近い距離や経済的な結びつきが強いのにもかかわらず、
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