花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
現代資本主義の「国家資本主義化」という世界の趨勢に日本は伍していけるか
資本主義は個人の自由競争を基本とする。アダム・スミスは、自由競争が行われる中、「神の見えざる手」が市場利益を最大にする、と説いた。この古典的資本主義は、その後、産業が発展するにつれそのまま維持することは難しくなり、国家による様々な手直しが行われてきたが、ファシズムや共産主義の挑戦をはねのけた現代の資本主義が、基本的に自由競争を存立の基盤とすることは変わりない。だから、これを阻害する独占を禁止し、プレーヤーが同等の条件で自由に競争できるよう制度の整備を図ってきた。
その現代の資本主義は、今、新たな挑戦を前に変貌を余儀なくされつつある。他でもない中国の登場だ。
個人が自由に競争するのでなく、国家が個人に「肩入れ」して試合に送り出す。試合をするプレーヤーの同等の条件を旨とした資本主義が、試合開始の時点からプレーヤーが同等でない。そういう中国に伍していくにはどうすればいいか。こちらも国家が「肩入れ」するしかあるまい。かくて、現代の資本主義は「国家資本主義化」していく。かつて、国家丸抱えの産業政策が「日本株式会社」と揶揄された日本だが、今や、「欧州株式会社」「米国株式会社」が大手を振るう。国家丸抱えは日本の得意分野だ、日本は存分に力を発揮できる、と思いきや、ことはそう甘くはない。どうして「日本株式会社」は機能しなくなったのか。
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