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在日米軍の「特権」を定めた日米地位協定の60年越しの問題(下)

止まらない沖縄の米軍事故の究明をはばむ日米地位協定。問題解決の道はあるのか

山本章子 琉球大学准教授

「日本は主権国家なのか」。膨れあがる県民の怒り

 このとき問題になったのが、米軍が大学一帯を封鎖した根拠である。

 なぜ米軍の施設・区域外、しかも民間地で米軍が事故現場を管理できるのか。日米地位協定の本文を読んでも、それを許すような規定はない。南米訪問中の稲嶺恵一沖縄県知事の留守を預かる牧野浩隆副知事に、「日本は主権国家なのか」と膨れあがる県民の怒りが重圧となってのしかかった。

 事故に対する日本政府の動きは鈍かった。深夜にボリビアで事故の報を聞いた稲嶺知事は急きょ帰国、小泉純一郎首相に面会を申し入れる。しかし、小泉首相は「夏休み」を理由に断る。

 こうしたなか、強い危機感を持った牧野副知事は記者会見で、稲嶺県政が一度は受け入れた、普天間飛行場の辺野古移設の見直しに言及し、波紋が広がった。その結果、小泉内閣は当時進行中だった在日米軍再編協議を、「沖縄の負担軽減」とリンクさせることで対応することになる。

拡大米軍ヘリの墜落で黒こげになった立ち木の前で開かれた墜落10年の集会=沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学

今日まで維持される占領米軍の特権

 在日米軍の刑事裁判権を規定する日米地位協定第17条の第10項bは、米軍基地外での米軍事故・犯罪の捜査について、米軍は「必ず日本の当局との取極に従う」と規定している。しかし、沖縄国際大学を占拠した米軍は、日本側の事故現場立ち入りを一方的に禁じた。

 これを可能にするのが、日米地位協定合意議事録の存在である。合意議事録は、日本当局が「所在のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない」と、取り決めているからだ。

 合意議事録とは一言でいうと、日米地位協定の本文に反して、それ以前の日米行政協定で担保されていた在日米軍の特権を温存する日米合意だ。1960年の日米安保条約改定と合わせて、日米行政協定が日米地位協定へと全面改定される際、交渉担当者間の備忘録として作成された。

日米地位協定の意義を否定する合意議事録

 合意議事録は、いわば日米地位協定の成立の意義を根底から否定するものだ。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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