通常のマクロ経済政策も金融緩和政策も効き目なし。景気対策を超える発想が不可欠
2020年03月19日
新型コロナウイルス感染症が世界保健機関(WHO)によりパンデミックと宣言され、株式市場の乱高下にみられるように世界経済は大きな混乱に陥っています。人や物の移動が制限されたため実物経済が停滞は必至で、日本でもリーマンショックや東日本大震災を超える経済危機が予想されます。
政府は、イベント自粛や小中学校の一斉休校要請などによって悪影響を受ける中小零細企業や個人事業主等に対して、休業補償や資金繰り支援を打ち上げていますが、必要な政策を適切に実施するために冷静な判断が求められます。
新型コロナ感染症による経済的な停滞には、通常のマクロ経済政策は役に立ちそうにありません。中国経済に過度に依存していた結果、サプライチェーンが断絶したことや、人々の移動の制限やイベント自粛による経済の落ち込みにも特効薬はありません。
さらに、これまで各国の市場では、中央銀行による超金融緩和政策の結果、バブルが生じており、さらなる金融緩和で対処しようにも限度があります。実際のところ、3月15日の米連邦準備理事会(FRB)や16日の日本銀行の緊急対策は市場から「NO」を突き付けられました。
とすれば、いま必要なのは、いわゆる景気対策という発想ではありません。社会的弱者の生活と命を守ることを最優先に考えるべきです。そのうえで、国民心理の安定化を図るために、大規模な緊急経済対策を立案しなければなりません。
国民民主党はいま、①10兆円の家計減税、②10兆円の給付措置、③損失に対する10兆円の経済補償――を柱に、緊急経済対策の党内議論を進めています。もちろん、中小零細企業や個人事業者のための資金繰り支援、支払い猶予(モラトリアム)はその大前提となります。
アベノミクスのもと、実質賃金の低下とともに、将来の社会保障への不安から個人消費は低迷してきました。新型コロナウイルスの感染拡大で「消費マインド」はさらに冷え込むでしょう。しかし、前述したように、現下の危機的状況に求められるのは、消費の喚起ではなく、目に見えて少なくなる家計収入をいかに補い、貧困化から救うかです。
その観点からまず考えられるのは、所得減税という政策です。勤労型の給付付き税額控除とセットで実施すれば、低所得者の皆さんに生活保障のための現金が行き渡ります。働いても手取りが減らない仕組みですから、モラルハザードの問題もありません。
減税や現金給付をしても貯蓄に回り、消費の増加につながらないという批判がありますが、目的は消費喚起ではなく貧困対策なので、減税分の一部が貯蓄に回っても目をつぶるしかありません。
勤労型の給付付き税額控除は理想的だが、制度設計に時間がかかり、所得把握にも問題があるという指摘に対しては、国民1人当たり一律10万円を給付するという提案もあり得ます。いわば、ベーシックインカムの“実験”を行うわけです。金持ち優遇という批判には、この給付を課税対象にすれば、低所得者対策と位置付けることが可能です。
もう一つ考えられるのは、消費税を時限的に減税することで家計全体を救済する方法です。たとえば、10%(軽減8%)の税率を
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