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新型コロナで「戦時下」のフランスと日本の危機管理

大統領が籠城要請、経済的損失は政府が支援。注目される東京五輪に向けた日本の対応

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

パリ名物の道路に張り出したテラスレストラン。椅子もテーブルも片付けられて、なし=2020年3月15日、パリ・シャンゼリゼ大通り)(筆者撮影)

 フランスは目下、新コロナウイルスとの戦いで「戦時下」にある。

 3月16日正午をもって「外出禁止」令が出たほか、親族、友人、知人との少数集会も禁止された。15日午前零時からはレストラン、カフェ、ディスコはもとより、「日常生活に必要不可欠なもの以外を販売する商店は閉鎖、食料品店と薬局は例外」との指令も出た。シャンゼリゼ大通りをはじめ、閑散としている。

 1991年1月の湾岸戦争勃発当時も、参戦国だったフランスはアラブ系の報復テロを恐れて人影が途絶えたが、グルメの国の象徴であるレストランは、閑古鳥が鳴きながらも開店していた。2015年にイスラム教過激派のテロが吹き荒れた時も、レストランは開店していた。新型コロナウイルスは、戦争よりもテロより強敵というわけだ。

「これは戦争だ」と6回繰り返したマクロン大統領

 フランスの感染者は6633人、死者は148人(3月16日現在)。欧州ではイタリアの感染者約2万5000人、死者2158人(同)に次いで2番目だ。政府内ではリステール文化相と環境担当相、大統領府官房の1人、議会では議員の感染者6人、議会スタッフ1人(同)の感染が判明しており、政府の中核にもウイルスはじわりと広がっている。

 マクロン大統領3月16日午後8時からラジオ・テレビで2回目の演説し、「これは戦争である」と6回繰り返した。フランスが未曽有の疫病「Covis-19」と“交戦中”であることを宣言したかたちだ。

市町村議会選挙の1回目投票に来た市民(パリ8区の投票所)=2020年3月15日(筆者撮影)
 「外出禁止」のほかに、親族、友人、知人との少数の「集会」も禁止し、欧州連合条約(EU)加盟国やスイスと締結する「シェンゲン協定」(ヒト、モノの往来の自由)を一時的に停止、近隣国との国境封鎖を宣言した。3月15日に1回目の投票を実施した市町村議会(2回投票、比例代表制)の2回目投票(3月22日実施予定)も、1回目の棄権率が約55%と高かったこともあり、6月21日まで「延期」を宣言した。まさに「戦時下」である。

手洗い励行。ハグ禁止。老人ホーム訪問禁止。集会禁止……

 フランス政府は、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスのパンデミック宣言をした直後から、「1日に数回の手洗い」「握手、ハグの禁止」「老人ホームへの訪問禁止」などを決め、健康省が特別の電話回線を敷いて、「健康相談」にも応じている。回線電話の番号はラジオ、テレビや地下鉄やバス内でも電光掲示版で絶えず、伝えられている。

アパートの入り口のドアに貼り出された「手洗い、握手ダメハグもダメ……」の注意事項=2020年3月15日、シャンゼリゼ大通り近くのアパート(筆者撮影)
 3月初旬の段階で
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