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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と陰謀論

蔓延を防ぐカギは教育と貧困対策、そして「信頼の醸成」だ

塩原俊彦 高知大学准教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐって、さまざまな情報が世界中を飛び交っている。そのなかには、ある出来事・環境が隠れた集団によって意図的に仕組まれたものであるとみなす、いわゆる「陰謀論」と結びついた情報も数多く含まれている。またしても、ロシアがCOVID-19と陰謀論を結びつけて世界を不安に陥れようとしているという見方もある。そこで、この問題について考えてみたい。

ロシアのやり口

拡大ロシアのテレビ局チャンネル1は、新型コロナウイルスの蔓延にアメリカの陰謀があるとほのめかす番組を放映した
BBCのサイトから

 米国務省傘下で海外からの情報操作に対抗するためのプログラムに従事しているグルーバル・エンゲージメント・センター(GEC)が2020年1月20日から2月10日までの間に米国を除く諸外国でツイートされた2900万ものCOVID-19にかかわる情報を分析したところによると、全体としてその約7%が陰謀論にかかわっていた。

 これは、2月29日付のワシントン・ポスト紙が一報し、3月5日付で続報を伝えたものだ。このGECは、2016 年3 月、バラク・オバマ大統領がその設立を決めた行政命令13721を発布してつくられたもので、外国へのテロリズムに対抗するためのコミュニケーション支援のための機関である。

 GECによる未公表の報告書によると、ビル&メリンダ・ゲイツ財団によって新型コロナイウルスがつくられたとか、中央情報局(CIA)によって開発された生物兵器である新型ウイルスが中国を攻撃したとか、まったくのでっち上げが世界中に広がっているという。ツイートのなかにはユーチューブとリンクして誤った情報を世界中に広げているものもある。この背後に、ロシアのディスインフォメーション工作があるというのである。

 ニューヨーク・タイムズ紙(2月22日付)も、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターの数千のロシアにリンクされたアカウントで工作が行われており、それらは英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語で同時に翻訳されていると指摘している。

 2月7日付のBBCの報道によれば、ロシアのチャンネル・ワンという公共放送では、新型ウイルスの開発・流行の背後に、製薬会社、米国政府、あるいはその機関がかかわっていると報道している。製薬会社はそのウイルスに対するワクチン開発で利益を得ようとしているというのだ。さらに、地政学上のライバルとなりつつある中国経済を弱体化させようとしているのだという。これに対して、2020年3月12日、中国外務省の趙立堅報道官は、「アメリカ軍が感染を武漢に持ち込んだのかもしれない」とツイートした。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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